フリー・エンジニア
高橋隆雄 フリー・エンジニア
高橋隆雄

2007年はAsteriskを取り巻く環境に大きな変化があった。大手企業がAsteriskを採用した製品を発売したり,Asteriskを自社のIP電話システムのサーバーとして使うユーザー企業が登場し始めるといった動きが挙げられる(関連記事1関連記事2)。今年最後の本連載でAsteriskの2007年の動きを総括する。

 本連載も2007年はこれが最後である。まずは今年もこの連載にお付き合い下さった読者の皆さんにお礼を申し上げたい。本連載が続いているのも読者の皆さんのおかげである。

 まだまだ認知度が高いとは言い難いAsteriskだが,2007年も2006年に引き続き「手応え」は感じた年だった。特に今年は大手企業がAsteriskを採用した製品を発売したり(関連記事1関連記事2),Asteriskの開発者であるマーク・スペンサー氏が来日するなど(インタビュー前編後編),話題に事欠かない年だった。

利用され始めたAsterisk 1.4

 2006年末にリリースされたAsterisk 1.4だが(関連記事),当初は不具合の問題などから様子見の状況が続いていた。だが,現在は徐々に利用され始めているようだ。とりわけ携帯電話と連携したシステムを作る場合などは,Asterisk 1.4でしか使えない機能を利用することがある(関連記事)。こうした状況も1.4の利用を後押ししているようだ。

 なお,2007年末までには最新バージョンとなるAsterisk 1.6のリリースが予定されているが,記事執筆の12月11日時点ではリリースされていない。Asteriskの新バージョンがリリースされるスケジュールは,まずβテストの後,RC(Release Candidate)版が公開される。その後で正式リリースとなる。だが,いまだβ版は公開されていないし,当たり前だがRC版も出ていない。

 とはいえ,RC版を公開した後に新バージョンをリリースするという流れはあくまでも原則である。というのは,2006年末のAsterisk 1.4のリリースの際は,RCを飛ばしたことがあったからだ。それだけに,今年の年末もどうなることやら・・・,というのがAsteriskに深くかかわっている筆者としては目下の懸念事項である。

 オープンソース,それもAsteriskのように“若い”オープンソースのソフトウエアの場合,その開発スケジュールや環境が十分に固まっておらず,開発に参加している人数も少ないため,リリース時期が不安定になりがちである。著名なオープンソースのプロジェクトであっても,なかなか予定通りに進まないわけだから,まだまだ“若い”Asteriskでは推して知るべしである。

日本Asteriskユーザ会発足

 今年は日本Asteriskユーザ会が発足した年でもある。本年5月から活動を開始した(関連記事)。今のところ特別な活動をしているわけではなく,OSC(Open Source Conference,オープンソースカンファレンス)を中心に,出展/講演を行うなどしてAsteriskの普及に努めている段階だ。

 OSCなどのイベントに出展していて気付くのは,Asteriskのことを「全く知らなかった」という人がまだまだ多いこと。その反面,極端に詳細な質問をしてくる方が毎回数人はいることである。あまり表立って語らない人が多いが,筆者が聞いている限り,実際に構築・運用していなければ出てこないような専門的な質問を受けることがあるため,どうやら独立系あるいは個人事業主のシステム・インテグレータが結構活動しているのではないかと思われる。これまで大手メーカーしか事実上参入できなかったPBX/IP-PBXの分野に,個人レベルでも参入できるようになったことがAsteriskの大きな意義だろう。