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図1●ソニー損保はオフィスを移転したシステム部門にAsteriskベースのIP-PBXを導入
ターボリナックスの「InfiniTalk」を採用した。ひかり電話ビジネスタイプにつないで活用している。
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 自動車保険や医療保険の事業を展開するソニー損害保険(以下「ソニー損保」)は2006年12月,システム企画部とその委託先スタッフの約120名が東京都大田区にある本社の近くにあるビルに入居することを機に,この新設オフィスにターボリナックスのIP-PBX「InfiniTalk」を導入した(図1)。これは,オープンソースのIP-PBXソフトウエア「Asterisk」をベースにしたサーバー・ソフト製品である。

 この新しいオフィスでは,インターネット接続回線にNTT東日本の「Bフレッツ」を採用した。IP電話サービス「ひかり電話ビジネスタイプ」を契約して電話番号を22番号取得し,同時8チャネルで使っている。同社が導入したInfiniTalkは,ひかり電話ビジネスタイプのSIPサーバーに直接レジストできる製品だ(関連記事)。同社もVoIPゲートウエイを介さずにつなげている。

 IP電話機は,プラネックスコミュニケーションズの「VTL-ST02H」を37台購入。このうちの1台は,システム企画部の新オフィスとKDDIのWANサービス「Powered Associate VPN」で結んだ本社に設置した。またシステム企画部オフィスには,FAX用と非常用を兼ねたアナログ電話回線を1回線引き込んでいる。

電話機増設は業者任せにしたくない

写真1●ソニー損保の土屋敏行システム企画部システム企画1課主査
写真1●ソニー損保の土屋敏行システム企画部システム企画1課主査

 同社は,InfiniTalkの導入に当たって,富士通のレガシーPBXも検討した。最終的にInfiniTalkに決めた理由を,システム企画部システム企画1課の土屋敏行主査(写真1)は「電話機の増設や移設を自社でやってみたかったことだった」と言う。一般的にPBXは,電話の増設や移設が発生すると電話工事会社に依頼することが多い。こうした作業をある程度ソニー損保が自ら実施したいという考えがあった。同社は導入後にIP電話機を2台増設したが,その作業は土屋主査が自ら実施した。

 増設したオフィスへのIP電話導入費用は,InfiniTalkのライセンス40人分とOS,サーバー・マシン,インストール作業および保守費用,トレーニング費,IP電話機,UPS(無停電電源装置)を合わせて250万円はいかない程度だという。この値段はもう一つの選択肢であるレガシーPBXとほぼ同じだった。

通話ログや録音の機能が役立つと分析

 導入後,InfiniTalkを使っていてよいと感じた点は,通話ログが取れ管理者画面で見られる点だという。「設定することで録音もできる。レガシーPBXだと考えにくい機能を手軽に導入できるところが良い。ボイスメールも付いている」(土屋主査)。同社はオプション製品のIVR(音声自動応答)ソフトも1チャンネル分購入しており,今後活用法を考えていきたいとする。

 動作の安定性については「Linuxで動作しているので,フリーズするようなトラブルはない」(土屋主査)。設定変更のため意図的に再起動した以外は,稼働し続けている。新しいオフィスにはUPS(無停電電源装置)を導入しているため,障害について不安視していない。

 一方で課題に挙げたのは電話機の使い勝手だ。すぐに発呼したい場合はシャープボタンを押すなど,移転前に使っていた電話機と使い方が異なる。「新しい電話機の使い方に慣れればいいが,慣れてもらわなくてもスムーズに移行できるような製品が出てくるといいと思う」(土屋主査)。またInfiniTalkはソフトウエアなので,保守がハードウエアは別になる。そのためハードウエアの保守をどうしていくべきかを考えることも課題だとする。

本社のレガシーPBXとの接続を今後検討

 今回導入したInfiniTalkは,本社で運用中のレガシーPBXからは独立しており,新設オフィスと本社の間は外線経由で通話している。今後レガシーPBXとつなぐことを検討するかもしれないという。土屋主査は,「InfiniTalkを選んだ背景には,本社で使っているレガシーPBXを将来的に巻き取る端緒にしたいということもあった。そのためには,まずどこかで使って評価してみないといけない」と考えている。(山崎 洋一)。