携帯電話を安く使ううえで忘れてはならないのが,導入後のコスト削減である。携帯電話の販売代理店各社は,(1)携帯電話の使用状況の管理,(2)携帯電話の料金プランの最適化,などを可能とする企業ユーザー向けのASPサービスを提供している(表1)。手間のかかる企業の携帯電話の管理を手助けする。

表1●携帯電話販売代理店が提供する主な携帯電話の料金管理・最適化のためのASPサービス
表1●携帯電話販売代理店が提供する主な携帯電話の料金管理・最適化のためのASPサービス
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支給した携帯電話の私的利用抑制効果も

 これらのASPサービスは回線ごとに,毎月の通話費用やパケット費用だけでなく,個々の通話先や通話時間,有料サイトへのアクセスまで,利用状況を丸裸にする。契約があるのに使われていない“遊んでいる”端末を探し出すことも可能なほか,社員の携帯電話の私的利用を抑制する効果も期待できる。実際,「一時は公私分計のサービスを求められたが,(企業とユーザー双方にとって)公私分計は手間がかかるので,利用されなくなる傾向にある」(ITCネットワークの目時利一郎営業第三部門長兼ソリューション営業部長)という。ASPサービスの導入効果として,おおむね100回線以上の大口ユーザーであれば通信費用の支払いを10%~20%減らせるという。

 利用の際に注意すべき点は2点。(1)各携帯電話事業者のWebサイトなどから料金明細のデータを取得できるサービスを契約しなければならないこと,(2)ほとんどのASPサービスの利用には利用料がかかること,である。(1)はNTTドコモ,KDDI,ソフトバンクモバイル,ウィルコムの各社が提供しているが,利用条件によっては1回線当たり数百円の利用料がかかる。また,(2)のASPサービス自体の利用料も1回線当たり数百円で,100回線なら数万円の出費だ。

 そのため,これらの利用料を上回る効果が出せるのは,「コスト削減額が大きい大口のユーザー」(販売代理店)となる。ただし,ITCネットワークなど今後の取り引き拡大などを狙い,無償でASPサービスを提供する代理店もある。回線数が少ないユーザーはそちらを検討するのもいいだろう。

ASPサービスで15%支払い額を削減したサークルKサンクス

 大手コンビニエンス・ストア運営会社であるサークルKサンクスは,三菱商事・住友商事系の大手携帯電話販売代理店であるMSコミュニケーションズのASPサービス「MobileStar」を利用して対前年度比で15%を削減した。携帯電話の通信費用が毎月1000万円近い同社にとって15%はかなり大きな金額だ。

 同社はNTTドコモの携帯電話を約1400台導入し,通信費用の支払いは本社総務部で一括していた。だがその管理の負荷は大きかった。そこでMobileStarの請求振り分け機能を活用。NTTドコモからの請求は本社総務部にまとめたままで,通信費用の請求を各本部に振り分けた。さらに,使用状況のチェックを,実際に携帯電話を使用する各本部配下の総務担当が担えるようにした。「現場レベルで料金チェックができるようになったことで,(無駄な通話や通信が減って)通信コストが数%下がった」(サークルKサンクス 業務統括本部総務人事本部総務部の加室智仁マネージャー)という。

 その上でMobileStarで料金最適化を実施している。同社は「1回線ごとに直近3カ月の使用状況を基にして,1400台の携帯電話個々に最適な割引サービスに自動移行できるようにしている」(加室マネージャー)。この結果,15%の通信費用を削減した。

人事異動時に登録作業の対応などは要相談

 料金プランの最適化は,他社のASPサービスでも標準機能となっている。ただし自動最適化はユーザー企業の理解を得る必要があるため,その対応は一律ではない。「手続き上,ユーザーの承認を得た上で料金プランを変更する」(兼松コミュニケーションズ 法人営業本部の西牧浩二副本部長)のが一般的だ。

 プラン変更に関して注意したいのは,ASPサービスの機能ではなく,携帯電話事業者による違いだ。NTTドコモは月2回までの料金プラン変更は無料で,変更の反映は当日もしくは翌日に完了する。実際に通信費用が安くなるかどうかは企業の利用実態によるが,「お盆休みの期間だけ通話料は高いが基本料は安いプランに変更する」といったことも可能だ。一方,NTTドコモ以外の事業者はプラン変更が反映されるのは翌月からとなるため,変更は原則月1回。利用料も発生しない。なお,NTTドコモの場合,月3回目のプラン変更から手数料がかかる。

 ASPサービスを導入する際は,人事異動時の入力作業負荷も大事な選択要素となる。ASPサービスは,原則ユーザー自身がWebブラウザから社員情報の変更などを入力できるが,新年度など異動の多い時期は,その作業だけで手一杯になってしまう。各販売代理店ではASPサービスの利用状況や入力件数などによって,入力を代行する場合もあるという。導入時には異動の作業も考慮して,営業担当者にこの点を確認した方がよい。

第1回 企業規模で変わる“最適な”携帯電話事業者 
第2回 法人向け割引サービスの特徴――NTTドコモ,KDDI編 
第3回 法人向け割引サービスの特徴――ソフトバンクモバイル,ウィルコム編 
第4回 月次の支払い総額次第でさらなる大口割引のチャンス 
第5回 販売代理店のASPサービスで管理コストと料金を下げる