NTTドコモとKDDIの法人向け割引サービスを見ていこう(図1図2)。割引の際のパラメータとなる(1)契約期間,(2)回線数,(3)支払総額のうち,事業者側は(1)によって長期契約ユーザーを優遇し,(2),(3)で大口ユーザーを優遇するのが一般的だ。

図1●NTTドコモの料金プランの構成
図1●NTTドコモの料金プランの構成
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図2●KDDIの料金プランの構成
図2●KDDIの料金プランの構成
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 このパターンにきれいに当てはまる割引サービスを提供するのが,NTTドコモとKDDIである。NTTドコモとKDDIの料金体系はよく似ている。ある販売代理店の幹部によれば「全法人利用の中の7割はNTTドコモ,2割がKDDI。残りがソフトバンクモバイルやウィルコム」だという。「コンシューマでの強みを法人にも生かしたい」(同幹部)KDDIは,NTTドコモに比べてユーザーにお得感を与える料金体系にして,法人ユーザーの拡大を図っている。それに対してNTTドコモも割引率を改定するなどして対抗。両社が競争することで,ユーザーは従来よりも安価になる割引を受けやすい状況になっている。

KDDIの割引率に対抗しNTTドコモが値下げ

 例えばNTTドコモの「ビジネス割引」というサービスを見てみよう。これは同一回線名義で一括請求をした場合,回線数に応じて基本料を割り引くものである。5月時点の割引率は,回線数が2~15回線で15%,11~100回線では20%,101~1000回線までは23%,1001回線以上は25%だが,6月1日以降はこの割引率が一部改定される(関連記事)。具体的には6月1日以降,2~50回線までが20%,51~1000回線までが23%,1001回線以上は25%となる。

 このNTTドコモの割引率改定に影響を与えたのがKDDIの「グループディスカウント」だ。それまでKDDIの「グループディスカウント」はNTTドコモの割引率より多少有利だった。割引率は2~4回線までが15%,5~49回線までは20%,50~999回線までは25%の割引を適用。5~10回線と50~999回線までならKDDIの方が割安だった。だが6月1日以降,5~10回線まではNTTドコモとKDDIはいずれも20%の割引となり,さらに2~4回線までならNTTドコモの方が割引率は高く割安になる(2007年5月11日時点の情報に基づく)。

小口ユーザーは個人向けプラン同等の法人割引がお得

 ただし,NTTドコモの「ビジネス割引」やKDDIの「グループディスカウント」は,回線数が多いほど割引率が高くなることから分かる通り,大企業・中堅企業ほど効果を上げやすい。ある販売代理店の幹部は,法人向け割引サービスで大きな恩恵を受けるのは「現実的には100回線以上の契約がある大口ユーザー」という。SOHOなどの業態で同一名義にまとめられる回線数が少ない場合は,通話料の割引もセットになったNTTドコモの「オフィス割引」(関連記事)やKDDIの「法人割」(関連記事)の方がお得だ。

 NTTドコモの「オフィス割引」やKDDIの「法人割」が対象にしているのは2~10回線の契約ユーザー。これらの割引サービスは個人向け料金プランの割引とほぼ同等である。例えばNTTドコモの「オフィス割引」は個人向けの「ファミリー割引」,KDDIの「法人割」は個人向けの「家族割」とほぼ同等のサービス内容となっている。

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