「あれ?明日も日経○○さんが同じ企画で取材にいらっしゃいますよ」。「この特集,いっそ日経△△さんとの合同企画にしてみたらどうですか」。

 記者が以前,日経コンピュータや日経ITプロフェッショナル(今年3月に日経システム構築と統合し,現・日経SYSTEMS)といったIT系雑誌の編集部に在籍していたとき,取材先の方から冒頭のようなことを言われて,バツの悪い思いをしたことが何度かある。

 どういうことかというと,弊社が発行している複数の雑誌が,ほぼ同時に,同じテーマで特集の企画を立て,同じ企業や個人に取材を申し込んだ,というわけである。特にITの世界で新たな動きが始まった直後は,こういうことが往々にしてある。カギとなる取材先の企業や人物が,ごく少数に限られていることが多いからだ。

 このように取材が重なったとしても,それぞれの雑誌で企画を立てた当事者同士は,これっぽっちも“同じ企画”などとは思っていない。一口にIT系と言っても,各誌の対象読者はIT部門のマネジメント層なのか,システム開発の実務を担うITエンジニアなのか,という具合に大きく異なり,同じネタを取り上げるのでも,当然“切り口”が違うからである。

 とはいえ,それは取材を申し込む側の論理。同じ出版社から何件も同じ分野の取材を受ける側は大変だ。つい「合同企画にしたら」と言いたくなる気持ちもよく分かる。分かるのだが,我々記者は異口同音に「切り口やコンセプトが違いますから」などと説明して,取材先にはご迷惑と思いつつも,個別に取材をセッティングしてもらったものだ。

 しかし,合同企画はさておき,うまい共同企画はできないものだろうか,という問題意識が現場になかったわけではない。実際に,複数のIT系媒体が共同で企画・運営したほうが,読者にとっても役立つテーマがあるのではないだろうか。しかも,多くの媒体を抱える弊社のようなメディアにとっても,強みを発揮しやすいテーマが。

 あった。これまで,あるようでなかった,ドンピシャのテーマが。

 それは「内部統制」である。

 米エンロンの不正会計による経営破綻をきっかけに米国で制定された「SOX法」について,最近よく耳にする読者も多いのではないだろうか。この6月7日には,このSOX法の内容を基にした「金融商品取引法」,いわゆる日本版SOX法が国会で成立したばかりである。

 日本企業は今後,こうした法的規制に対応することを通じて,不正防止やリスクの可視化,業務の効率化などを目的に,様々な形で「内部統制」に取り組んでいくことが求められる。経営層・マネジメント層からシステム構築に携わるエンジニア,そして企業にシステム構築サービスやIT製品を提供するベンダーまで,この問題にかかわる人の立場も実に様々だ。

 そこで弊社は,これら多様な読者層をカバーする5つの媒体の共同プロジェクトとして,内部統制に関する専門情報を提供する総合情報サイト『内部統制.jp』を立ち上げた。5つの媒体とは,日経コンピュータ日経情報ストラテジー日経SYSTEMS日経ソリューションビジネスの4誌,およびIT系総合サイトのITproである。

 これら5媒体は今後,それぞれの媒体で独自の視点から情報を提供するとともに,内部統制に関連するニュースや解説,製品/サービス情報などを「内部統制.jp」という共通の場で発信していく。さらにムックや書籍,セミナーなどの共同企画も検討する。

 サイトも立ち上がったばかりで,まだまだ不十分な点も多いが,各媒体が一致協力してプロジェクトを成功させることが,多くの読者の業務に貢献することだと肝に銘じている。