三つ目の原則は、「初期段階から今後の計画を明確に描くこと」だ。技術やビジネス環境の変化が激しいことを考えると、数年以上の長期的な計画を立てる意味は薄い。およそ2年後をターゲットに、システム部門が主体となって、ビッグデータ活用に関わる「システム(IT基盤や分析ツールなど)」「人材と組織」「データ」のそれぞれをどのように成長させていくべきか検討すべきだ。

 この検討のたたき台として、先行するユーザー企業やITベンダー、コンサルティング会社などへの取材に基づき、3段階の成長のステップを示した(図8)。最初の成果を達成するのが「第一段階」、全社的な信頼感を醸成するのが「第二段階」、全社への定着を図るのが「第三段階」である。

図8●システム部門主導でビッグデータの活用を全社に拡大するためのステップ
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 全社的な取り組みで成果を出していくことを目的にする以上、場当たり的にシステムを調達・増強していては早晩、立ち行かなくなる。ビッグデータ活用に積極的な利用部門を支援することは重要だが、だからと言って拡張性の乏しいシステムを構築してしまい、データ活用が急速に広がった際に対応できないような事態を招かないよう注意したい。

 システム部門の人材や組織についても、クラウド化の進展などで、役割が変わっていく可能性がある。ビッグデータをより高度に活用推進できる組織体制を描くと、それに応じた人材確保にも早めに手を打たなければいけないことが見えてくる。

 データに関しては、ビッグデータで新たな分析の切り口を発見するために、データの量や種類を継続的に増やしていく必要がある。ただし、顧客からデータを集めたり活用したりするには、収集するときから利用範囲や規約を整備しておく必要がある。社外から有償でデータを購入するにしても、明確な目標がないと、ハードディスクの肥やしになるだけだ。

クラウド利用が有力な選択肢に

 「システムの2年後」を描くに当たり、中期的な展望として特に考えておかなければならないのは、クラウドサービスの利用だ。データを蓄積したり加工したりする情報基盤にPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)やIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)を活用すれば、パフォーマンス管理やスケーラビリティがオンプレミスのシステムに比べて有利なうえ、安価に導入できる利点もある。パナソニックの松本所長は「データのセキュリティが問題ない範囲でクラウドサービスを積極的に活用していく」と言う。

 ビッグデータの動向に詳しい野村総研イノベーション開発部の城田真琴上級研究員は「クラウドを採用できるかどうかの主なポイントはセキュリティだ」と語る。「通信中や保存中のデータの暗号化やVPNの利用といった対策を組み合わせれば、個人情報を入れても大きな問題はなくなっていく。中堅以下の企業での利用がまず進むのではないか」と予想する。

 アクセンチュアの工藤シニア・プリンシパルも同様の意見だ。「セキュリティの確保は費用のかけ方次第だ。海外からもデータを収集し管理したいなら、グローバルなクラウドサービスを利用する方がコンプライアンス的にも取り組みやすいのでは」と見る。

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