システム部門が主導権を取ってビッグデータ活用に乗り出し、成果が見え始めたら、その有効性を多くの現場や経営陣に認めてもらわなければならない。そうしないと、取り組みが社内に拡大していかないからだ。
現場に出向き数字をぶつける
利用部門と密に連携するには、地道で細かい努力の積み重ねが必要だ。大阪ガスのビジネスアナリシスセンターで、約10人のデータサイエンティストを率いる河本センター所長は「分析結果を利用部門に受け入れてもらえるまでに、5年以上かかった」と打ち明ける。
いくら収益向上に貢献すると自信のある分析結果であっても、一方的に提示するだけでは、なかなか採用してもらえなかった。同センターのスタッフは利用部門の現場に出向いて、粘り強く意見を交わした。
風向きが変わったきっかけの一つは、「修理車両の顧客宅への到着予想時間」を提案したとき。「経験値と意外に合っている」と認めてもらえたことだった(図7)。その後、徐々に利用部門側からデータ分析の要望を出してもらえるようになった。
図7●大阪ガスのビッグデータ活用における現場の利用部門との連携
こうしてビジネスアナリシスセンターは、今では年間約100の案件を“受注”するようになった。利用部門に負担してもらっている費用はセンターの売り上げになり、業績評価の対象となる。
利用部門が経営会議などで、センターの分析結果を活用して成果を上げた案件を報告する際には、グラフや表に「ビジネスアナリシスセンターと取り組んだ」などと記載してもらうようにした。こうすることで、経営陣にもデータサイエンティストと利用部門の連携状況が伝わり、分析の成果も徐々に認めてもらえている。
事業に深く関わり社内でのプレゼンスを高めるには、こうした地道な活動も欠かせない。