SAPジャパンとアビームコンサルティングは2012年4月26日に協業を強化し「“超リアルタイムビジネス”ソリューションを強化する」と発表した。発表文によれば、協業内容はアナリティクスだけでなくモバイルや、MDM(マスター・データ・マネジメント)による経営基盤の構築など広範囲にわたっている。

 そこでSAPジャパン、アビーム両社の幹部に経緯や今後の展望を聞いた。SAPによれば、これはSAP自身の事業モデルの変革をパートナーと推進する、という側面があるという。

 なお、SAPジャパン側対応者は3人で、バイスプレジデント ソリューション営業統括本部 ビジネスアナリティクス営業本部 本部長 IFRS支援室 室長の桐井健之氏、バイスプレジデント ソリューション営業統括本部長の上野豊氏、バイスプレジデント パートナー本部 本部長の佐藤知成氏。

 アビームコンサルティング側対応者は、執行役員 プリンシパル プロセス&テクノロジー第1事業部 FMC統括事業部長 IS統括事業部長 IFRSInitiative統括責任者の中野洋輔氏である。

(聞き手は井上 健太郎=ITpro


どのような経緯でSAPジャパンとアビームは協業発表に至ったのか。

(上野)背景にあるのは、SAPの事業モデルの変化だ。かつてはERPビジネスが中心だったが、2010年にERP関連ビジネスの比率は6割まで下がり、2011年は45%まで下がっている。SAP HANAやモバイル関連のソリューションを「ERPエコシステム」と捉えれば、まだまだERP主体であるともいえるが、事業戦略としてはERP以外のシステム事業を今後も伸ばしていこうという方針が明確になっている。

写真●左から順にSAPジャパンの桐井健之ビジネスアナリティクス営業本部 本部長、上野豊ソリューション営業統括本部長、佐藤知成パートナー本部 本部長、アビームコンサルティングの中野洋輔FMC統括事業部長IS統括事業部長
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 従来はSAPジャパンの直販主体で、ERP以外のソリューションを売り込んできた。しかし、2011年にそろそろそうした分野でもパートナーとの協業を強化してバリューを高めるソリューションを作っていくべきだと考えた。

 具体的には、2011年にSAPジャパンのパートナーに向けて、「当社の社屋に、協業のための部屋を用意するので、専門チームを作ってほしい。また専門チームに割り当てる人数はもちろん、どのくらい協業に際してHANAやモバイルなどで売り上げを作ってくれるかについてコミットメントもしてほしい」と呼びかけた。

 そうして協業を具体的に進めるに至ったのが、アビームコンサルティングと、アクセンチュア日本法人だった。なお、アクセンチュアともアビームとの協業発表と同じ4月26日に、「SAPジャパン新社屋内にイノベーションセンターを新設する」という趣旨のプレスリリースを発表している。

(佐藤)今、日本国内でSAP認定コンサルタントはおよそ1万人いるが、まだ8割がERPベースだ。2011年に売り上げはERP以外が上回っているので、この比率も変えていきたい。アビームにはSAP認定コンサルタントがおよそ1000人いるが、うまく変化していただきたい。

SAPジャパンのチャネルセールスと直販の比重はどのようになっているのか。

(上野)チャネルセールスは、ERPが売り上げの7割を占めている。非ERPツール採用を顧客企業に直接アプローチする営業スタッフはSAPジャパンで140人ほどいる。

独SAPグループ内で、ERP以外の売り上げが上回ったタイミングが海外よりも日本は遅れたのか。

(佐藤)1年遅れだった。ただし認定コンサルタントでERP関連が8割を占めている状況は海外も国内もほぼ同様だ。

協業に至った2社と、選に漏れたパートナーとの違いはどこにあったのか。

(上野)大手メーカー系や大手Sierなども、コミットメントを出してくれたものの、取り組みの先進性と、目標金額には差があった。SAPとしてはERP以外のすべてのソリューション(HANA、モバイル、アナリティクス、CRM、SCM、NetWeaver、Sybase IQなど)提供に単体で取り組むのではなく、横串で提供できるソリューション作りにコミットメントを出してくれるパートナーを求めており、それに同意してくれたのがアビームとアクセンチュアの2社だった。

アビームはどのようにSAPからの呼びかけを受け止めたのか。

(中野)SAPビジネスの国内のナンバーワンパートナーであると自負してきたが、新しいソリューションには確かに消極的だと見えていたかもしれない。ちなみにアビームではERPが7割となっている。今回の協業を機に、営業もできるコンサルタントがSAPジャパンに常駐する。2~3人が常駐できるスペースが確保されている。常駐チームのリーダー格は40代後半のディレクタークラスの人材だ。

常駐した人の活動像は。

(中野)プロジェクト的に進んでいくと思う。SAPジャパンのスタッフと、個別の案件を踏まえてビジネスシナリオやソリューションを相談しながら作っていく。

アクセンチュアとアビームの協業体制は同じなのか。

(上野)SAP社屋内の専用部屋の広さはほぼ同じだ。やはりアクセンチュアも営業的な役割のコンサルタントが常駐する。

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