今まで日本企業がERPシステムを導入する際に生じている問題点を紹介してきました。今回はこの問題をさらに複雑にしている話をします。

 それは、日本人は「流行(もしくはブランド)」に惑わされやすいということです。典型が「グローバルスタンダード」という言葉です。この言葉にだまされて、必要もないのに、安易にERPパッケージを入れてしまった企業もいるのではないでしょうか。

著名なERPパッケージの導入が相次いだ「ERPブーム」

 そもそもERPによるグローバルスタンダードとは具体的に何を意味するのでしょうか。たしかに欧米製のERPパッケージは、多言語対応や多通貨対応に優れています。そのため、異なる国でほぼ同じようなシステムを作るのであれば、ERPパッケージを利用して世界共通の標準システムを作るという選択肢もありえます。

 しかし、もしも各国の商慣習や流通構造が異なっているのであれば、同じシステムを構築しても意味がありません。会計システムのような最低限の機能をERPパッケージで開発するにしても、個別の業務システムまでパッケージに合わせる必要はありません。本連載で何度も繰り返しているように、大事なのは全世界共通のスタンダードなシステムではなく、個別のビジネス環境にマッチした効率的な情報システムです。

 こうした「流行に弱い」という日本人の特性をうまく利用したのが、15年前のERPブームです。日本企業のサラリーマン経営者や二世経営者は、創業経営者とは異なり、自分自身の経営手腕に対して突出した自信を持っていません。そのため、独創的なチャレンジをして失敗することを怖れるあまり、独創よりも流行に走りがちです。これがステータスに憧れる情報システム部長の好みと一体化した企業で、著名なERPパッケージの導入が相次ぎました。

 15年前のERPブームは、日本の企業経営者の特性を熟知した完璧なマーケティング戦略が実行されたと思います。最近はクラウドに流行が移っていますが、それでもいまだに当時のERP導入ブームに踊らされている企業経営者も残っています。

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