米Citrix Systemsは、デスクトップ仮想化ソフト「XenDesktop」を中心に、社内システムをリモートアクセス経由で利用するための製品群を提供しているベンダーである。昨今では、BCP(事業継続計画)にXenDesktopを生かす例が増えているという。同社のSVP兼CMOに、XenDesktopをBCPに生かす例と、リモートアクセスを取り巻く社会の変化について聞いた。
BCP(事業継続計画)にCitrix製品が有効と聞いた。
その通りだ。ユーザー企業はDR(災害復旧)に投資する必要はない。投資すべきは、仮想化やクラウドだ。仮想化やクラウドに投資すれば、結果としてDRも可能になるからだ。
デスクトップ仮想化ソフト「XenDesktop」によって社内システムのWindows画面をリモート操作できるようにすることは、企業の生産性を高める上で有益だ。そして、このシステムは同時に、DRを実現する。
二つの事例を紹介しよう。
一つ目の例は、英国の銀行グループであるHSBC Holdingsだ。同社は、オフィスビルが手狭になっていた。最初に考えた解決策は、数百万ドルを投資して新しいビルを増築することだった。しかし、同社は気付いた。オフィス空間の占有率が平均して60%でしかないことに。社員の外出や出張などによってオフィス空間の40%が使われていない状態にあったのだ。
同社は、XenDesktopに投資して、HOT DESKING環境(フリーアドレス環境)を実現した。会社内のどこからでも、その場にあるディスプレイとキーボードを使って、自分自身のデスクトップ環境にアクセスできるようにした。結果、オフィスの利用率は120%に向上した(100人分の空間を120人で共有するかたち)。新社屋の建築はストップした。
DRの例としては、XenDesktopの導入からしばらくして、イングランドで洪水が起こった。会社に来られない状態に陥った。しかし、同社は何も困らなかった。自宅にいながらXenDesktopを使って、オフィスにいるのとまったく同じように仕事ができた。
二つ目の例は、カナダの銀行であるTD Canada Trustだ。同社は、HR管理(人材管理)の戦略として、ITシステムを利用する際に、自分の好きなデバイスを自由に使えるようにしている。XenDesktopを使えば、自分が使いたいデバイスから社内のWindowsにリモートアクセスできる。
人はみな、ITの利用環境が優れている(規則が緩やかで選択の自由度が高い)会社で働きたいと考える。こうした需要に応えることで、人材を確保しようとしているのだ。
DRの例としては、カナダで開催されたG8/G20サミットに関連して、オンタリオ州トロントで暴動が起こった。同社は、出社せずに自宅から自分のデバイスで仕事をするよう、社員に指示を出した。こうして、出社が難しい状況下でも、何の問題もなく仕事をこなすことができたからだ。