「米国では、テレビを見る人が年々減り続けている」――。何年も前から言われ続けていることだ。

 それでも、スポーツ中継は別格だった。特に米国のプロアメリカンフットボールリーグ(NFL)は、試合中継のたびに高い視聴率を叩き出してきた。

 優勝決定戦であるスーパーボウル(毎年2月上旬の日曜日に開催)の中継ともなれば、そのテレビ視聴率は50%前後に跳ね上がる(2017年2月の視聴率は48.8%、Fox調べ)。「テレビが見られていない」と言われていても、「NFLだけは全く影響を受けない」と思われていた。

 ところが2016年あたりから、そうとも言えなくなってきた。2017年1月の米ニールセンの発表によると2016年シーズンのテレビ視聴率は、開幕当初から前年割れを記録。最終的には前年比で8%の低下という結果となっている。

 9月に始まった2017年シーズンは、さらに厳しい数字を見せている。米Dairy Wireの報道では、テレビ視聴率はここまで2015年シーズンとの比較で15%ほど下がっているという。

 2017年にNFLのテレビ視聴率減を引き起こした原因は、いくつか考えられる。例えばほかのスポーツとの、視聴者の奪い合いだ。NFLシーズンと時期が重なる野球(MLB)の優勝決定戦(ワールドシリーズ)は、2016年に続き2017年も第7戦(現地時間11月1日)までもつれ込む展開を見せたのが、その一因とされる。

 「トランプ大統領の発言に対する、選手による抗議行動」も、大きな原因として指摘されている。米調査会社のラスムッセン・リポートの発表では、「この抗議行動をきっかけに、『NFLを見る気分が薄れた』とする視聴者が34%に上った」としている。

 だが、それ以上に大きな理由は「視聴者の間で“コードカッティング”が本格的に進んできたから」と言われている。コードカッティングとは、消費者がケーブルテレビの契約をやめてインターネット経由での動画配信サービスに切り替える動きを指す語であり、2010年ころから使われ始めていた。

 コードカッティングが進んでも、リアルタイム性が高いスポーツのテレビ視聴率には、それほど影響が現れてこなかった。しかしその影響が、本格的にスポーツでも表面化してきた考えられる。そもそもテレビを見ない層、いわゆる「コードネバー(cord-never)層」が増えてきたという点も大きい。

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