現在、消費者の日常や企業のビジネス活動の至るところに、“デジタル”が自然なかたちで存在している。そのため企業は、自社のマーケティング戦略や個々の施策といった“狭い枠組み”の中でデジタルを活用するのではなく、テクノロジーを味方に付けて、自らをデジタル化していかなければならないといわれている。企業の「デジタルトランスフォーメーション」に関わる話になると、こういったフレーズが必ずといっていいほど出てくるようになった。
日本でも、この1~2年で「デジタルトランスフォーメーション」という言葉をよく耳にするようになった。ただし、米国でこの言葉は少し前から「マーケティング」にとどまらず、「企業全体のトランスフォーメーション」という意味で使われるようになっている。
特に、これまでマーケティングという文脈の中では語ることが難しかったAI(人工知能)や音声認識、顔認証といった技術が、今後のビジネスやマーケティングを変える存在として目されるようになっている。少なくとも、様々な事例を見聞きする限りでは、その傾向が強まっている。
とはいえビジネスの最前線は、必ずしもそうとはいえないようだ。米PointSource社が2018年2月に、米国企業のシニアマネージャー以上の役職者約700人以上に実施した調査から、その傾向が見えている(編集部注:調査結果は個人情報の登録後に閲覧可能)。デジタルトランスフォーメーションは、米国企業にとっても依然高いハードルとなっているのだ。
同調査では、「2017年中に、デジタル方面に注力することをより一層考えるようになった」と回答した企業が94%、そして「現在自社の社員が利用しているテクノロジーに満足していない」と回答した企業が57%だった。これを一見すると、調査対象の企業の多くが現状にはあまり満足しておらず、デジタルへのシフトを加速したいと考えているように見える。
ところが「2018年に自社を大きく差別化させるテクノロジーは?」という質問では特定の技術に集中することなく分散していた。しかも明確にこの分野への予算が割けていない企業も少なくなく、具体的なアクションに落とし込めていないところが大半だ。