Longhorn Build 4051のレビュー(パート1) 続き

ついにきた公式公開,本物のAeroがデモされた
 次の日の朝,Gates氏の基調演説が開場になり,PDC2003の参加者はわれ先にとよい場所を求めた。人垣を乗り越えて行くにつれ(ビデオ1),私は興奮を抑えきれなくなってきた。Keithと私は,Microsoftの社員やパートナ用の予約席の真後ろで2列目の真ん中に陣取り,ノート・パソコンとカメラ,そしてこの歴史的なイベントを記録するためのデジタル・ビデオカメラを準備した。

 Build 4051で見た以上の何かがLonghornにあるという兆しに,われわれはすぐに気づかされた。会場が暗くなり,素晴らしい出来栄えのMicrosoftのプロモーション・ビデオ(ビデオ2)が始まった。このビデオはWindows 95以降のすべてのテレビCMが稚拙に思えてしまうほどの出来だったのだ。鳴り響く軽快な曲(Overseerの「Horndog」)で始まるプロモーション・ビデオには「ひらめきに満ちているのはアイデアだ」「今,未来を実現する」「ハードにではなくスマートに働く」「ピクセルじゃなく,写真を見ているんだ」「われらは素質を持ったマニア」「まだ始まったばかり」などといったテーマが盛り込まれていた。観衆にTablet PCやAthens Prototype PCなどの革新的な製品を紹介しつつ,メディア・プレイヤにカレンダ,To-Doリスト,Longhorn Photo Library,統合ビデオ再生機能,それにデジタル・インクといったLonghornのAeroで可能になるユーザー・エクスペリエンスのいくつかが公開されていった。これで観客は否応なしに熱狂した。さらにビデオで公開された映像は,Build 4051の陳腐なビジュアルよりも,もっと洗練されたものだった。未来は明るい。

 そしてMicrosoftの会長兼チーフ・ソフトウエア・アーキテクトであるBill Gates氏がステージに登場し(ビデオ3),わざとらしくも,Longhornについての情報を欠いた,定番の「これまでの経緯」スピーチを参加者に行った。この眠気を誘う話が30分を過ぎたころ,Gates氏がやっと口にしたのは「さて,Longhornでの大きな進歩になるわけですが,リアルタイムで認識したり合成したりできるスピーチ認識機能をシステムに組み込みます」ということだった。まさにこれだ。スピーチが進行する中,Gates氏のすぐ後に予定されているAllchin氏の講演で「Big Event」ともいえるAeroのプレビューが行われるだろうことをわれわれは理解し始めたのだ。

 そしてついにGates氏は詳細について語り始めた。「Longhorn(中略)のリリースは重要な事件になります。この10年で最も重要なリリースであり,Windows 95以来の最大規模のものになります。われわれは3つの異なる分野に取り組んでいます。まずはFundamentals(基礎部分)です。セキュリティやアプリケーション競合の起こらない自動インストールを意味します。この基礎部には多くが詰まっています。ユーザーが使用するすべての異なる機器が接続可能になり,それぞれの機器に情報を表示したり,その情報をユーザーの手を煩わせることなく構造化したり,豊かな装備にもかかわらず少ない操作での利用を実現したり,エージェントを使用することで,ユーザーを操作の主役にします。その結果,ユーザーのプライバシを理解し,受信メールをフィルタして,どのメールをユーザーの手元に届けるかといったことを理解できるようになります。ユーザーにとって大いなる進歩が実現されます。ユーザーはいくつかの簡単なことをするだけで,自分が主役なのだということを感じることができ,結果的に自信とコントロールを手に入れられるのです」。

Hillel氏のデモに会場は興奮した
 次にGates氏は,MicrosoftのWindows User Experienceチームのプロダクト・ユニット・マネージャであるHillel Cooperman氏をステージに招いた。Hillel氏は,Aeroが動くLonghornのビルド(デモ版などではなく本物)で,活気があり刺激に満ちたデモンストレーションをしてくれた。

 正直言って,われわれは圧倒されてしまった。もはやそこにはXPもどきのSlateテーマなど存在せず,すべてのウインドウ内の要素が透き通っていることから名付けられた「Glass Window」インターフェースが導入されており,それがデスクトップに驚くほどの3D効果をもたらしていたのだ。観衆からの拍手喝采にしばしば中断を余儀なくされながら,Hillel氏はLonghornでのユーザー・エクスペリエンスをウインドウ,Sidebar(サイドバー),WinFS,コラボレーション機能,スケーラブル・グラフィックス,Webサービスにわたり紹介しながら,じっくりと示してくれたのだ(ビデオ4)。

 予想をはるかに超えるほどの長時間におよんだHillel氏のデモンストレーションは,非常に刺激的であり,午前中のヤマ場であったことは確かである(ビデオ5)。その後,Group Vice PresidentのJim Allchin氏がLonghornでのソフトウエア開発の可能性と変更点について語った。多くの人にとって,こちらの方が午前中のプレゼンテーションの目玉だったことだろう。ただ私たちは,Hillel氏のデモの方に目を見張った。Longhorn Build 4051の再評価が必要だった。私たちが想像したほど悪くないのかもしれない。