Windows Longhornへの道 今分かっているすべて 続き

新グラフィックス機構「Avalon」の正体
 Longhorn最大の特徴は新しいグラフィックス・アーキテクチャである。従来のGDIとGDI+を廃して,パフォーマンスと視覚的な明瞭さの新しい領域に踏み込んだ。当然,Longhornは従来のGDIとGDI+に依存するWindowsアプリケーションもサポートするだろう。しかし,従来のアプリケーションはプログラムを書き直す必要はなく,シームレスに新しいLonghornグラフィックス機能の多くを利用できる。一方,Longhornのために作られた新しいアプリケーションは,より刺激的な機能を提供するだろう。それは,Longhornグラフィカル・ユーザー・インターフェース「Aero」(開発コード名)と呼ばれているものだ。

 GDIとGDI+に取って代わるLonghornのコア・レベルのグラフィックス・エンジンは,「DCE(デスクトップ・コンポジション・エンジン」(開発コード名「Avalon」)と呼ばれている。DCEを提供するころには,Microsoftはいくつかのハードウエアの標準化を促すことになる。

 その1つに,高いアスペクト比で,120ドット/インチ以上の解像度を持つ高密度の液晶ディスプレイがある。現在のディスプレイのほとんどは96ドット/インチである(図3)。ほかにも,先進のハードウエア・アクセラレータ機能を搭載した3Dグラフィックス・チップがある。Microsoftは,それを確実にするためハードウエア企業と前例のない協働歩調をとって,互換性があるハードウエアが,Longhorn出荷以前か,出荷と同時に確実に利用できるように進めている。


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図3●120ドット/インチの高密度解像度のディスプレイ

 Longhornアプリケーションは,解像度と無関係に作られる。一方,大部分の現在のアプリケーションは,ピクセルに依存して書かれている。しかし,DCEはその場で,96ドット/インチのアプリを新しい解像度にきちんと基準化して表示する。「高密度ディスプレイなら,テキストの明瞭さが上がり,読む速度が増し,生産性が改善します」と同社Windowsクライアント・プラットフォームのKerry Hammil氏 プログラム・マネージャはいう。

 一般消費者は,Longhornのより視覚的効果の機能を利用するために,必要なハードウエアを入手することになる。そして,Microsoftは従来のWindowsのように,ハードウエアに関して最小システム要件を明記する必要はなくなるだろう。

 つまり,Longhornには,少なくとも現在のWindowsと比較して,目がくらむようなグラフィックス・ハードウエア条件が必要となりそうだ。ぎりぎり最小のLonghornシステムで,32ビット・カラーが,少なくとも1024×768ピクセルでの表示ができなければならないだろう。そして,それには少なくとも64Mバイトのメモリーを積んだハードウエア・アクセラレーション機能の3Dビデオ・カードが必要に違いない。しかし,これはあくまで基本的な必要条件である。ある程度楽しむためには,少なくとも128Mバイトのメモリーを積んだ高性能のビデオ・ハードウエアを必要だろう。Kerry Hammil氏は,「ローエンドの必要条件は大まかにいって,DirectX 7レベルの技術を実行するのに必要なシステムに近い。またアッパーエンドの必要条件は,DirectX 9に近い」と彼女はいう。

 新機能を理解するために,現在のWindowsでグラフィックスがどのようにレンダリングされるか考えてもらいたい。グラフィックスは1つのデスクトップ・バッファにレンダリングされる,そして,あらゆるアプリケーションはデスクトップにレンダリングする。古典的な例を考えてみよう。1つのウインドウを別のウインドウの上で素早く動かすと,テアリングが見える。つまり,そこでは下にあるウインドウが一時的に白くなる。現在のGDIベースのディスプレイ技術では,滑らかで一貫したアニメーションを行うことは難しい。Windowsは,おのおののアプリケーションに,全く同じフレーム上でレンダリングするよう要求する。それは透明性を表現するのを非常に難しくしている。

 DCEでは,各アプリケーションは,オンスクリーンではなく直接,それぞれのバック・バッファに対してレンダリングする。Windowsは,これらのバック・バッファを使ったあらゆるフレームの上でデスクトップを組み立てる。そして,視覚効果は必要に応じていくつかのウインドウに適用される。これらの効果には,透明性だけでなく,3Dトランスフォームと再カラーリングのような視覚的効果も含まれる。デスクトップをレンダリングするのに,開発コード名「DirectX/LH」というDirectXを使う。

 プログラマの構想では,「DCE API」あるいは「Longhorn Client Platform SDK」は,GDI/GDI+のデスクトップAPIに似ており,DirectXのAPIには似ていない。それは意図的なものだ。そのために,開発者はできるだけ速く行動できる。それは,Windows NTのWin32 APIをWindows 3.x APIに似せるというMicrosoftが1990年代初期に行った決定に似ている。Hammil氏によると,PDCでこの秋デビューするAPIには,開発者に2Dベクトル・グラフィックス,3Dグラフィックス,デジタル画像処理,ClearTypeテキストとビデオ機能が含まれるという。