(Paul Thurrott)

 私は「2005年,Microsoftは何を出すか」という記事のなかで,同社が2005年に出荷すると予想される主要製品について書いた(該当サイト)。その記事について,読者からいくつかの疑問が集まった。

 そもそも2005年は,次世代Windows「Longhorn」を出荷する前年に当たり,主要製品をたくさん出さない遷移期間になるはずだった。しかし,Windows XP Service Pack 2(SP2)の出荷が,多数の製品のアップデートを延期させることになった。この影響で2005年には,忙しい出荷スケジュールを目にすることになるだろう。この製品出荷ラッシュは,私としては面白くてしかたないが,現場への導入を計画しなければならない人々をがっかりさせることだろう。

 2004年にMicrosoftは企業向け製品の出荷スケジュールをもっとよく伝えると明言した。同社はその後,少なくとも2つの主要製品をその年の遅くの予定に変更することに着手した。今や企業向け製品の出荷に関して,Microsoftの錯乱したアプローチは顧客の間に重大な疑念を提起している。

 今回は,2005年出荷予定の製品にまつわる「問題点」を列挙しよう。

SA問題:ソフトウエアのアップグレード保証はあるのか
 ある重要な疑念が,「Software Assurance(SA)」ボリューム・ライセンス契約を選択した顧客に起きている。SAの顧客たちは,SA契約の有効期間内に出た新しいソフトウエア・バージョンを無償で受け取ることになっている。しかし,最初のSA契約の有効期間中には,少なくとも2つの主要製品「SQL Server 2005」と「Windows Longhorn」が大きく延期された。

 この延期のため,SAの顧客の一部は約束されていたはずのソフトウエア・アップグレードを受け取れないかもしれない。Microsoftがこの状況を補償する何かをしない限りは,この結果は興味深いことを招く可能性がある。何人かのアナリストたちは,顧客が大挙してMicrosoftのSAプログラムを破棄するだろうといい出した。私はそれが本当かどうかは分からない。ある技術や方式を採用するにせよ,捨てるにせよ,法人顧客は普通ゆっくりと態度を変えるからだ。しかし,今回の問題が起こす悪感情はどんなものか,推し量るのが難しい。

セキュリティ問題:対策は進んでいるがまだ不十分という
 私は2004年にセキュリティに重点を置いて書いてきたので,ここでその要点を長々と講ずるつもりはない。Microsoftの製品は,悪意を持ったハッカーや,怪しいオンライン企業家たちからの攻撃に毎日毎分さらされている。こいつらは保護されていないPCを探し出し,Windows PCに犬みたいに付きまとい,何百ものセキュリティの弱点を突いてやろうとしている。

 現在のセキュリティ問題のいくつかは,Microsoft自らのせいだが,同社はその負担を正確に推定して,ゆっくりではあるにしても,より安全性の高い製品作りへと動いている。XP SP2はその目標に向かっての最初の1歩だった。そして,2005年第1四半期に出る「Windows Server 2003 Service Pack(SP1)」は,サーバーにもその広範な技術的保護の思想をもたらすだろう。

 しかし,根本にあるセキュリティへの懸念は,昔からあるものだ。ほんの数年前にわれわれは,最新製品にだけ適用するセキュリティ更新を売りつけるMicrosoftの戦略について,その是非を議論していた。

 今日,この懸念は現実になった。もし一番安全性の高いMicrosoft製品によるインフラが欲しいのなら,あなたはクライアントをWindows XP SP2に,サーバーをWindows Server 2003 SP1にしたいだろう。多くの企業にとって,システム規模が大きかろうが小さかろうが,それは実現できない目標だ。多分Microsoftはこのアップグレードをさせるための金銭面での動機付けを提供できたはずだ。

 そして,Microsoftのセキュリティ戦略は技術的な穴があり,そのいくつかは今埋められているところだ。同社は米GIANT Company Softwareを買収した。それは優秀なスパイウエア対策アプリケーションを目当てにしたものだ。Microsoftはこれを「Windows AntiSpyware」(ベータ版)として無償公開した(既報)。

 それはあくまでクライアント製品であり,大企業で簡単に導入できるものではない。2005年後半のいつかの段階で,Microsoftはこのスパイウエア対策ソフトの企業版を出す,と私はにらんでいる。企業版のスパイウエア対策ソフト製品について,早く情報を入手したいと思っている。

 さらにMicrosoftは2005年1月の月例のセキュリティと一緒に,初めて不正ソフト削除ツール「悪意のあるソフトウエアの削除ツール(Malicious Software Removal Tool)」を出荷した。このツールはウイルスやワーム,そして他の電子的攻撃ソフトを除去する。しかし,リアルタイム・スキャン機能はない。私は,情報が入手できるようになり次第,このツールに関する詳報をお知らせするつもりだ。

x64問題:ソフトが入らない,ハードのドライバが不足
 私は2004年夏以来,x64ベースのソフトウエアとして,「Windows XP Professional x64 Edition」と「Windows Server 2003 x64 Edition」のプレリリース版を試用している。全般的にはx64製品の品質と性能,互換性の高さには感心している。箱から出したXP Pro x64は(言葉の上の比喩であって,本当に箱があるわけではない),Windows XPの32ビットの製品版に比べて,よりよいドライバ・サポートを含んでいる。そして,XP Pro x64の出荷が近づくにつれて,もっともっとたくさんのアプリケーションがうまく動き,XPとほとんどシームレスな使用感を提供するようになり始めている。

 しかし,それでもXP Pro x64が移行に当たって,大きな問題を抱えているだろうと,私は考えている。第1は,はるかに多数のアプリケーションが,XP Pro x64上では動かないこと。それに加えて第2は,多くはこのプラットフォームにインストールさえできないだろうこと。さらに第3は,すべての階層のアプリケーションが,x64フォーマットでそろってないこと。例えばXP Pro x64で動作する第1層のウイルス対策アプリケーションはまだない。

 2つ目のインストールの問題は,2つの原因に大別できる。それは,多くのアプリケーション(Microsoft製品も含む)がバージョン・チェックをして,間違ってXP Pro x64を未来のバージョンと推測し,インストールを拒否するのではないかということだ。もう1つの原因は,多くの32ビット・アプリケーションが,不可解にもいまだ16ビット版インストーラを使っていることだ。x64テクノロジはもはや16ビット・サブシステムを持たないので,16ビット版インストーラは動かせない。

 さらにハードウエアへの対応状況に関しては,ドライバの準備が不足していることがある。XP Pro x64は,添付ドライバの素晴らしいコレクションと一緒に出荷されるが,その配布の中に,あなたに必要なドライバが1つでも欠けていれば不運としかいいようがない。

 私は自宅のオフィスで広範囲にわたるハードウエアを持っており,中には最近買ったばかりのスキャナが2台ある。しかし,XP Pro x64では動こうとしないのだ。このドライバの状況はアプリケーションの問題とも絡んで,期待しているユーザーの多くをひどい目に会わせるだろう。x64が将来のプラットフォームになるのは明らかだが,私は一般の人は少しの間,XP Pro x64の導入を待ったほうがよいかもしれないと思い始めている。

Itanium問題:このプラットフォームは消える
 もし,x64の現状が気に食わないと思った人は,少なくともItaniumのハードウエアを基準にはしないのだろう。

 私は先日Itaniumについて書いたコメントに関して,ホームページでだれかからムカつく文句をもらった。しかし,私はそもそもの主張を撤回するつもりはない。私の意見では,Itaniumは技術的な行き止まりにある。いくつかのハイエンドでの利用形態では短期間生き残るにしても,いずれは行き止まりだろう。

 そしてMicrosoftと業界は,Itaniumではなくx64に群がっていて,広範な製品とサーバーでx64をサポートしている。x64プラットフォームはまだItaniumサーバーの拡張性と性能に到達する途上にあるが,それは必ず実現し,しかも多分すぐに達成するだろう。だからx64 XeonチップとItaniumチップの両方をホットスワップ可能な単一の64ビット・ハードウエア・プラットフォームを作ろうというIntelの計画は,むしろ珍妙に聞こえる。特にそのプラットフォームが2007年まで出荷されないだろうことを思えば。2007年って,そのころにはみんなx64で動かしているだろうよ。