(Paul Thurrott)

 最近私は,Windows NT Server 4.0とWindows 98のユーザーの運命に関する記事を書いた(「Windows 98のサポート延長はどんな意味があるか」「サポート終了を迎えつつあるWindows NTに今何が起きている?」)。その中で,Microsoftがしかたなくこれら2つのシステムを退場させる場合,将来何が期待できるかを触れた。

 きっと技術に詳しい方の多くは,登場して6~8年もたった古いOSを使うという考えを時代遅れに思うだろう。しかし,景気悪化と購買サイクル,そして従来のアプリケーションを使い続けなければならないという状況で,企業が出せる予算は厳しいものがある。従って,いまだに多くの大企業や中小企業の現場で,こうした古いOSや,もっと古い非Microsoft製システムを今日も使っており,しばらくはまだ使い続けるのである。

 今回はこの話題をまとめて,読者からの返事も紹介しながら,以前の『Windows &.NET Magazine』の読者調査の結果も交えて論じよう。読者の返事と調査結果の両方とも,現実世界で技術を進歩させる痛みについて多くを語ってくれる。(訳注:この調査は米国のもの。日経Windowsプロ編集部でも2月末にWebサイトで読者調査を行った。その結果は本誌4月号で紹介する。)

現実には,なかなか新技術には飛びつけない
 読者の方々と同様に,私はテクノロジ大好き人間だ。しかし,投資利回り(ROI)と現実のニーズを考慮して,新しい技術へのむやみな欲求は抑えなければならないと思っている。短命だったドット・コム・ブームを例外として,技術が入手可能になったからといって,ユーザー企業がそれをすぐに導入した例は,現代の企業活動の歴史にはなかった。

 その一方で,IT導入に前向きな決定権限者や管理者,技術指向のユーザーたちは,ときにはあいまいなコストを正当化した上で,自分たちが欲しい技術を購入することを強いられる。ビジネス現場や政府(教育機関を含む)が主導する技術の調達は,MicrosoftのOSを出す周期よりも,歴史的にはもっと長かった。その結果招いたのが,世界中の企業で異なる能力や異なるぜい弱性を持つ製品バージョン同士の不整合である。この管理面の悪夢は,数多い非Microsoftの技術と一緒にしようとすると,悪くなる一方である。

 以前にも書いたように,この状況に対してMicrosoftは,1990年代半ばの「Windows everywhere」というテーマから,今日の相互運用性を重視する,より現実的なテーマへと数年の間に劇的に変化した。同社は相互運用技術よりも,移行技術を提供するほうに関心があるようだ。新製品のほうがより安全で,運用コストもかからないと宣伝し,古い製品のサポートはあまりやりたがらない。しかし,人々はソフトウエアが急に孤立無援になっても,アップグレードの選択肢はない。

安くなるハードウエア
LinuxやOpenOffice.orgの欠点はなくなるか

 Microsoftの新しいライセンス案をじっくり見た読者の1人は,「(非営利団体向けの)技術導入の計画を立てているところだが,ますます既存の事例とは違うことが分かってきた」と指摘した。私は,PCの価格モデルが前例のないところまで下がってしまったのではないかと思っている。つまり,数年前なら典型的なPCは,1500ドルかそこらだった。ところが,全機能を備えたPCが,今日500ドル以下で購入できる。一方,MicrosoftのOS(潜在的にはOfficeも)のライセンス料金は,以前に比べるとPCの製造コストの大部分を占めるようになってしまった。私はそのことが,人々をしてLinuxやOpenOffice.orgなどのオープンソースのデスクトップ・ソリューションを続々評価し始めた1つの理由だと思う。

 関連した意見として一部の読者は,Windows 98のサポート・ライフサイクルが延長になったことで,MicrosoftはLinuxに追い付くチャンスを得たと書いてきた。Windows 98が今でも稼働しているシステムは,Windows XPや1~2年のうちに出るLonghornはサポートできない。こうしたPentium IIマシンやPentium IIIマシンは,少量のメモリーしか搭載していない。企業はさらにハードウエア・コストの償却期間を延ばす上で,デスクトップLinuxをよい導入候補とするかもしれない。

 こうしたレガシーなデスクトップPCで使っているアプリケーションのことも忘れないようにしよう。ほとんどのWindows 98マシンでは,多分Office 2000かOffice 97,またはもうサポートされていないか,まもなくサポートされなくなるもっと古いソフトウエア・パッケージが稼働している。それでは,LinuxとOpenOffice.orgを使うとしたらどうだろう。トレーニング・コストがかかる上,十分な機能がまだ足りない。しかし,それらの問題が1~2年のうちに改善しないと,だれがいえるだろうか。

レガシーWindowsをあきらめるきっかけは
セキュリティ問題が決定打

 セキュリティに関しては,Microsoftは正確には次のように指摘している。つまり最新のシステムが一番安全であり,年を経たサポート対象外のシステムはすぐに障害が起こると。私としてはそれは正しいと思う。レガシー・システムに関して「まだそれが動くから」という意見に,セキュリティの問題で疑いを差しはさんでいる(驚異的な数の「まだそれが動くから」という電子メールを受け取ったことは明らかにしておくべきだと思うが…)。ある読者は正確に,特にシステムがまだうまく動き続けている場合は「どんな移行でも痛い」と,指摘した。そして,Active Directory(AD)以前の環境で動いている現場は,ADの導入にはひるんでしまう。

利用者数はクライアントもサーバーも
Windows 2000が圧倒的

 2003年9月に行った『Windows &.NET Magazine』の読者調査の結果では,何百という回答者からのフィードバックがあった。いくつかの数字を見てみよう。回答者のほとんどは,IT管理者と担当者でその85%は,既にデスクトップOSをWindows 2000 Professional Editionへ移行したと答えた。Windows XPへ移行したのは46%である。サーバーOSでは,Windows 2000 Serverへの移行は78%で,6カ月前と変わらず。一方,Windows Server 2003への移行は15%で,6カ月前に比べて6%増えた。

 多分もっと現在の状況をよく表す数字として,回答者の83%がWindows 2000をサーバー・プラットフォームに使っている点がある。対してWindows Server 2003は7%,NTは10%である。だが回答者の63%が,ADを実地に投入しており,対して現在移行作業中の人は15%,その計画なしという人は22%だった。こうした数字は回答者の所属する企業の規模によっていくぶん影響を受けると思っていたが,実際にはそうではなかった。ワークステーションとサーバーの移行計画とその実施時期は企業の規模に関係なく,ほぼ同じだった。

 新しいことについて書こうとすると,人々が現実に使う技術との間にはしばしばギャップを感じることを,個人的な経験から知っている。私は,なるべく新技術の紹介と,読者が日々直面している問題との間を歩こうと心がけている。