(Paul Thurrott)

 Microsoftは1月中旬,「Windows 98」と「Windows 98 Second Edition(Win98SE)」を,7年間サポートする企業向け製品群に含め,サポート期間を30カ月延長して,2006年半ばまでにした。最初にこのニュースを聞いたとき,大した話ではないと思った。

Linuxの影がちらついている
 Windows 98ははるか昔の製品で,同社が近い将来に限ったとはいえ,緊急のセキュリティへ配慮することを知って,好意的に思ったのは確かだ。しかし,サポート延長発表の1週間後に「Windows Services for UNIX(SFU)3.5」を無償提供するという同社の決定で,私は考え込んだ。Microsoftが今プログラム開発パワーを集中しているのは,「Windows XP Service Pack 2(SP2)」や,Windows Serverの次の改訂版や,「Longhorn」(次期クライアントOS)などであり,古い製品のパッチに人手を割くつもりがないのは明らかである。多分われわれは,Linuxの脅威を計算に入れて,Microsoftのすべての動きを組み立て直すべきだ。この“ソフトウエアの巨人”は,Windows 98のサポート延長により,Linuxがデスクトップに進出するのを阻止しようとしているのではないだろうか?

 事実を吟味してみよう。Windows 98は,いまだに世界中の中小企業でかなりの導入数がある。それらの導入先の多くは,Longhornはもちろんのこと,Windows XPが全く動かないかお勧めできないほど古いマシンを使っている。こうしたマシンのアップグレードには,ソフトウエアのカスタマイズやサポート契約が必要になる。そして,みんなが認めるように,ソフトウエアのコストは,システム全体のライフタイム・コストのうち最も高くつく部分だ。Microsoftのキー・テクノロジを導入するには,たくさんのMicrosoft製品を購入する必要があるし,各製品ごとにコストの問題に加えてライセンスの複雑さの問題を片付けなくてはならない。

Linuxへの移行にもコストはかかる
 だからといって,Linuxへ移行することが一概にいいとはいえない。従業員がLinuxベースのクライアントで,OpenOffice.orgやMozillaのようなオープンソースのソフトウエア(OSS)を使えるようにする必要がある。あまりお金をかけずに訓練できなければ,大きなコストダウンにはならない。

 多くの会社にとっては,この移行は十分実行可能だろう。自国と世界各国の政府の動きを見れば分かる。導入済みのMicrosoft製品を置き換えるため,Linuxベースのソリューションへ移行するための調査や,実際に移行を始めた例は,増えつつある。そして,行政機関が導入するときは,単純に一括して実施する。行政機関がLinuxへ移行した例として一番よく知られているのはドイツのミュンヘン市である。予算の問題に直面しながら同市が2006年までに1万4000台のデスクトップをLinuxベースに移行させると決めたことは,OSS支持者がフリー・ソフトウエアのソリューションの大きな勝利の例としてよく引き合いに出したがる。

 では,今回のWindows 98のサポート延長によって,ユーザーへWindowsの利用を促したことになるのか――まず,多くの会社がWindows 98の利用をすぐに止めてしまうのを阻止するだろう。もし,Windows 98のサポートがこの1月に終わっていたら,多数の会社が代わりのもの(XPを含む)を探し始めたことだろう。その流れは,新しいセキュリティ・ホールが公表されて,Windows 98では修正されないという事態が続くと拡大していくはずだ。この状況に対してユーザーは怒り,Linuxの採用を検討するだろう。

 しかし,完全にサポートされている現役バージョンのWindows XPをもってしても,Microsoftの多くの顧客を引き止めるには十分ではない可能性がある。それはパッチ管理の問題だ。Microsoftは,Windows XPのパッチを定期的にリリースしているが,Windowsベースのパッチ管理はいまだに愉快なものではない(2004年にはマシになるだろうが)。

もっと98システムを延命させる
ハイテク・ギャンブル

 今,サポート期間を延長したことで一時的に静まりはしたものの,態度をまだ決めかねている多くの顧客が“ハイテク・ギャンブル”に出る可能性はある。これまで,顧客がライセンスに対して抱く不満に,Microsoftは必ずこたえてきた。同社は物議を醸したLicensing 6.0プログラムの発表以来,そのライセンスの適用方針を,少なくとも半ダースは改良している。将来を考えて,Windows 98のユーザーはよりよい条件を待つ手もあるし,さもなければ最低限の方策だが,Windows XPとLonghornの双方をカバーする「ソフトウエア・アシュアランス」プランを待てる。よりよいライセンス条件が整えば,企業がもう1~2年はWindows 98システムを維持する状況を生み出せるだろうから,長期間にわたってコストを削減できる。

 興味深いことに,Microsoftの発表は,Linuxの脅威を心配していることを暗示している。「Microsoftは,これらのOSにいまだ依存している世界中のユーザーのことを配慮し,さらに一握りの市場,特に小さいが出現しつつある市場に,わが社の製品のライフサイクル・サポート・ガイドラインを伝える時間的余裕を,われわれMicrosoft自身が持てるようにするために,この決定を下した」と発表文中にある。

 ここでいう「小さいが出現しつつある市場」は,普通,経済の主流にいる企業に比べ手持ち資金を持っておらず,OSSソリューションを検討する可能性が高いところである。そして,多くの国々は政府のIT購入政策を決めている最中で,非独占的でロー・コストなLinuxベースのソリューションにますます熱い視線を注いでいる。

 もし,あなたの会社でWindows 98ベースのPCが大部分なら,私はなぜそうなっているのかと,もし将来のアップグレードの計画があればそれをどうするのかをぜひお聞きしたい。Microsoftのサポート変更は,アップグレードに関する決定に影響を与えたか? そして,あなたのビジネス上の必要から見て,Linuxは現実的な代替案を提供するか?