(Paul Thurrott)

 前回,私はWindows 98のサポート期間を延長するという,Microsoftの計画について詳述した(「Windows 98のサポート延長はどんな意味があるか」)。同社の計画は,デスクトップのアップグレードと移行を計画していた世界中の企業にいくぶんほっとする余裕を与えるものだ。

 Windows 98がいまだに広くデスクトップで使われているのと同様に,MicrosoftのWindows NT Server 4.0もいまだに広く小規模または中規模のサーバーで使われている。そして,NTは2004年12月31日に引退することが決まっている。Microsoftは1月末に,まだ残っているNTユーザーをWindows Server 2003へ移行させる計画を発表した。

 これまでの流れを振り返ると,Microsoftが1996年にNT 4.0を公表したときから多くの変化が起きた。当時,ほとんどの企業はハイエンドのUNIXベースのメーカー独自のサーバー・システムを使っていた。中小規模のビジネス現場の多くでは,米NovellのNetWareや,その場しのぎのピア・ツー・ピアLANを使っていた。NT搭載マシンは,すべての規模のビジネス現場でおなじみだった。というのは,それらが安価であり,MicrosoftがWindowsベースの製品で富と名声を得たPCの価格モデルに支えられていたからだ。

 ローエンドでは,各会社は低コストで使いやすいソリューションとして広くNTを導入した。さらにITの上流でも,集中化が進んだ企業のIT部門の外側で,NT搭載マシンを多数導入させることで,NTは大企業の中にまさに裏口の足場を見出した。今日,Linuxが様々な企業の中でこうした草の根の支援を受けている。Linuxプラットフォームが,かつてWindows NTやWindows 2000が後押しを受けたように,ITの主流の中で支援を受けられるのかどうか,なかなか面白い見ものだろう。

 Windows 2000が主力だった間(2000~2003年),多くの企業はWindows 2000へアップグレードする代わりにNT 4.0サーバーを使い続けることを選んだ。Microsoftはこれに多少なりとも驚いた。そのアップグレードは複雑でしかも高くついたので,Windows 2000の時代が到来したときにも,かなりのNTがそのまま使われていた。Windows Server 2003を開発する段になって,MicrosoftはNT 4.0からの移行をこれまでより簡単にすることに決め,この製品と一緒にいくつかの移行/アップグレード用ツールと手本となるガイドラインやそのほかの文書を出荷した。2003年4月にWindows Server 2003が出荷された時点で,昔からのNTを使い続ける理由はなくなっていた。NTのサーバーがどんどん時代遅れになる一方で,Windows Server 2003がよりパワフルで機能を満載するようになったからだ。2003年中にかなり目だった数のNTユーザーが離れつつあった。

「2003に移行すれば,20~30%節約できる」
 では,NT 4.0からの移行とアップグレードの実態は,今日どのようになっているだろうか。そこで私はNTの移行のシナリオについて聞くために,同社Windows Serverプロダクト・マネジメント・グループのJim Hebertゼネラル・マネージャとTroy Zaboukosプロダクト・マネージャに取材した。「企業はNT 4.0からWindows Server 2003への移行に際して,TCO(Total Cost of Ownership,運用・保守・教育なども含めたシステムの総経費)を,20~30%も節約している。だから現実に多くの事例で移行することは採算に合う」とHebert氏はいった。

 彼がいうには,普通顧客は自分たちがかけたコストを6~18カ月で回収している。これらのコストは例えば,多数の古いNTサーバー群をより簡単に管理できて可用性の高いマルチプロセッサ搭載のWindows Server 2003マシンへ統合することで埋め合わせできる。また,生産性を増し,セキュリティのリスクを減らした。同社は「Windows 2003は攻撃を受ける曝露面が60%少ない」という。

決め手は今年出るVirtual Server
 そして近い将来,Microsoftは米Connectixから2003年に取得した技術を基に,Virtual Server製品を出荷する予定だ。この仮想化ソリューションは,管理者がいくつかの仮想NT環境をサーバー上で運用できるようにするもので,本物のNT環境でしか動かない重要なソフトウエアを100%の互換性で稼働でき,集中管理の恩恵を与えてくれる。Virtual Serverは,NTの完全なアップグレード戦略を提供できる重要な製品だ。

MSのWebサイトで情報提供
 NT 4.0からの移行を進めているユーザーを支援するために,Microsoftは顧客に対して広範囲の配備用ツールと手引きを提供している。パートナは小規模な会社がNTからの移行とアップグレードを計画するのを助けるエンド・ツー・エンドのサービスを提供している。最近までそうした情報をすべて調べたり,それらを見つけたりするのは,難しかった。そこでMicrosoftはこうした情報へのリンクを顧客の成功例やオンラインで入手できるツールとともに提供する「Windows NT Server 4.0 からアップグレード」というWebサイトを新たに立ち上げた(該当サイト)。

 Microsoftの目標は,NT 4.0に固執する多くのユーザーを,NT Server 4.0のサポート期間が終わる2004年末までに,できるだけWindows Server 2003やWindows 2000,Windows Small Business Server(SBS)2003に移行させることだ。IDCの市場調査によれば,この移行の動きは既に始まっている。NT Server 4.0ベースのサーバーが導入されている数は,2002年の260万台から,2004年初めには200万台へ減っており,2004年末には130万台まで減少すると見られている。もし,あなたがこういう移行作業の最中だったり,計画中であったりするなら,Microsoftが勧めているセルフ・サービスのプログラムやツール,ドキュメントを活用すべきだ。読者の中でNTからの移行に直面している方から,ご意見を聞きたい。