米Microsoft会長兼チーフ・ソフトウエア・アーキテクトのBill Gates氏は4月25日朝(現地時間),Windows Hardware Engineering Conference(WinHEC) 2005の冒頭で基調講演を行った。この講演で,同氏はx64(AMD64およびIntel EM64T)対応であるWindows XP x64 EditionとWindows Server 2003 x64 Edition,それに次期Windows「Longhorn」(開発コード名)について語った。Gates会長の発表のハイライト部分は,既報の通りであるが,ここでは同氏やMicrosoftの幹部が言及したそのほかの話をまとめたい。


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 まず,64ビット化が急速に主流になりつつあることに関して,Gates氏はユーモラスに「640Kバイトのメモリーで将来も十分であると言ったことは一度もない」と話した。彼が本当に言いたかったのは,Windows x64 Editionで利用できる膨大なメモリー空間なら今後何年でも十分だという点だ。「もちろん,最終的には(Windows x64 Editionが提供するより)多くのメモリーを必要とするアプリケーションが将来は現れるだろう」と同氏は注釈を加えた。

 Gates氏は,「64ビット版SQL Server 2005」「Visual Studio 2005」「Commerce Server 2006」「Host Integration Server 2006」「BizTalk Server 2006」「Services for UNIX」を今年中にWindows x64 Editionに対応させると発表した。さらに2006年から2007年にかけて,64ビット版「Windows Longhorn Server」(次期メジャー・バージョンのWindowsサーバーOSの開発コード名)を提供するとともに,「Exchange Server 12」(次期Exchange Serverの開発コード名),「Microsoft Operations Manager」(サーバー管理ソフト),「Virtual Server v2」(次期サーバー向け仮想マシン・ソフト),「Windows Server Compute Cluster Edition」(ハイパフォーマンス計算処理向けWindows)を対応させるという。


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 同氏は,64ビットへの移行を,80年代に起きた16ビット化や90年代に起こった32ビット化の動きになぞらえた。しかし,64ビット化は,これまでより容易であるとした。32ビットのx86アプリケーションに対してWindows x64 Editionが互換性を持つからである。

 また,2つのモバイル向け機器がGates氏によって発表された。2つとも非常に驚いた。1つは,補助カラー・ディスプレイ装置で,Longhornを搭載したノートPCやタブレットPCに複数搭載される。この装置はカラーであるだけでなく,Windows Mobileデバイスに非常によく似ている。2つ目は,9インチのサイズでタブレットPCに似た「ウルトラ・モバイル2007」という装置である。他のMS幹部はこのデバイスの開発コード名が「Haiku」であることを明かした。

 ニュースはさらに続く。現在のレガシーWin32 API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)はLonghornの機能のために増強されるという。開発者は,Longhornの機能を利用したレガシー・アプリケーションが作りやすくなる。これまでMicrosoftは,Longhornの新機能はマネージ・コード向けのWinFXというAPIでのみ利用できるとしていた。

 Gates氏と部下によるLonghornのデモも興味深かったが,視覚的にはそれほど印象的でなかった。米Apple ComputerのMac OS Xにあるものと比べると物足りない。だが,Microsoftの幹部は,基調講演中にデモされた「Aero Glass」というユーザー・インターフェースは未完成で,次のベータ版では改良されると述べた。Gates氏がデモしたAero Glassインターフェースは,Mac OS Xのように透明になったり,半透明になったり,アニメーションをしたりするなどの効果をサポートしている。アプリケーション・スケーリングという機能も実演された。これは,レガシー・アプリケーションを,将来の高解像度(DPI)ディスプレイで正しく表示するための機能である。

 また,Longhornには,スタート・メニューの中に検索語を入力するボックスが付くようになる。ユーザーが最初に使う場所だからだという。仮想フォルダという機能も備える。文書に対するリンクをまとめた論理的なグループである。例えば,All Documents,Authors,Keywords,Rating,RecentおよびTypesという仮想フォルダがデフォルトで用意される。

 Longhornで表示されるアイコンはちょっと印象的だ。ラスター・グラフィックス技術が使われている(ギザギザのビットマップではない)。あらゆる解像度でなめらかに表示される上,サムネイル・モードにすると,ファイルの中身を画像として表示する。例えば,Word文書ファイルのアイコンでは,最初のページの縮小イメージを表示する。PowerPointのファイルのアイコンでは,最初のスライドである。フォルダのアイコンでもその中身のファイルが現れる。

 別の講演でMicrosoftのWindowsクライアント・ビジネス担当シニア・バイス・プレジデントであるWill Poole氏は,Longhornのさらに細かい機能を発表した。制限ユーザー・アカウントによるセキュリティの確保については,既に「仕切り直しでスタートするLonghornの姿 【1 クライアント編】」で説明しているが,今回Poole氏は,現行のレガシー・アプリケーションとの互換性維持に用いる「仮想レジストリ(virtual Registry)」という機能について説明した。さらに同氏は,次世代のXbox 2のゲーム・コントローラがLonghornでも利用できると述べた。同一のコントローラがTVゲームとPCの両方で利用できる。

 Gates会長とPoole氏は別々にLonghornの新しい開発スケジュールについて説明した。新しい計画では,製品の出荷はこれまでの予想より6カ月遅くなる。Longhornベータ1の提供は,この夏である。また,2回目のDeveloper Preview版が9月にProfessional Developers Conference (PDC) 2005で出てくる。さらに,その後で出てくるベータ2が,一般への公開ベータ版として利用される。同社によると,Longhornの製品出荷は2006年のホリディ・セール・シーズンである。これは8月から11月に相当する。Poole氏は,ベータ1で基盤機能を削り込み,PDC 2005のDeveloper Preview版でAPIを絞り込み,エンドユーザー向け機能をベータ2で確定すると述べた。

(Paul Thurrott)


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