(Paul Thurrott)

 米国シアトルで2005年4月25日から開催する「Windows Hardware Engineering Conference(WinHEC)2005」の少し前に,米Microsoftでプラットフォーム部門を統括するJim Allchinグループ副社長は,何度も延期された次期Windowsの「Longhorn」(開発コード名)に関する若干の情報を公表することに決めた。

 今のところ2006年半ばに出荷を予定しているLonghornは,Allchin氏によればマイナーなアップデートではなく,メジャー・アップデートのWindowsになる。「だから,いつも否定する人のことは忘れなさい」と言い。「Longhornは派手に行くよ」と付け加えた。

Longhornに多額の資金を投入
 Longhornは,2003年10月に開催された「Professional Developers Conference(PDC)2003」でベールを脱いだ。Bill Gates会長の基調講演で,その次世代OSの能力について売り込みを始めた。だが,その時以来,同社はこのOSの度重なる出荷延期と,重要な機能として以前公表していたものを実装しないという2,3の発表のほかは,ほとんど沈黙していた。

 Allchin氏は,Longhornがマイナーなアップデートになる恐れはないと語る。「(Longhornは)漸進するものではない。世界の人々は,これが次のサービス・パックだと考えている。そうじゃない。これは重要なものだ。われわれは大規模なマーケティングを実施する予定だ。ポイントは,これが重大なものであるということだ。Windows XP Service Pack 2(SP2)は重大なものだったが,これこそ本当に重大なものなのだ。われわれはこのOSの開発に多額の資金を投入しており,マーケティングの強化もするし,パートナにたくさんのチャンスを確実にもたらすために彼らと協力するだろう」。

魅力的なLonghornの新機能
 Allchin氏は,Longhornの機能について次の通り解説した。

Instant Desktop Search:Longhornの検索機能は,「Visualize and Organize」と呼ばれ,システムからWinFSが除去されるにもかかわらず,内蔵されたままになるだろう。Instant Desktop Searchは,MicrosoftがPDC 2003で初めて見せた仮想フォルダ機能を内蔵するだろう。

SyncManager:「電話やほかのマシンとの同期の過程を単純化するために,われわれはLonghornにSyncManagerを組み込んだ。それはPocketPC用のツールActiveSyncではなく,新しいバージョンの同期処理である。仕事先と家庭との間でシームレスに動作するように無線サポートの全セットを備え,環境を理解して動作する。Longhorn向けに作られた全く新しい仕組みである」。

セキュリティ:「Longhornは,安全性と機密性が高くなる。安全性とはつまり,ユーザーが自分を守るように手助けするということだ。親のように制御することで,あなたがだれといつ話せるかを決め,保護されたウインドウ内でインターネットをブラウズできるようにする。それが注目分野だ」。Allchin氏は,Longhornのユーザー権限レベルについても触れた。「Longhornでは,すべてのユーザーを,管理権限のあるユーザーではなく標準ユーザーとして稼働する。今日一番よくあるインストールでは,大部分がAdminstratorとして稼働しているため,そのマシン上のあらゆるものに完全な権限を持っている。LonghornはOSやユーザーに影響を与えられないように,制限ユーザーの権限だけを持つ標準ユーザーとして稼働するだろう」。

モビリティに関する機能:Longhornは,PCの紛失や盗難であなたのデータが盗まれないように,ボリューム全体を暗号化する機能を備える予定だ。そしてLonghorn時代のノートPCやTablet PCは,シャットダウンされている場合でも,カレンダや電子メールの情報をユーザーが見られるような小さな液晶ディスプレイを搭載するだろう。

展開が簡単であること:「個人ユーザーの環境に新しいマシンを追加したり,マシンを交換して古いマシンから新しいマシンに情報を移したりといった展開に関して,家庭内や企業の管理者が簡単に作業をできなければいけない」。

Internet Explorer(IE):Longhornは,2005年後半にWindows XP向けに提供する予定のIE 7よりも,はるかに進化したバージョンのIEを内蔵するだろう。このIEの新バージョンは,Longhornにおける親のような制御機能,セキュリティ機能,隔離機能と融合されるだろう。

スパイウエア対策:Longhornはスパイウエア対策技術を内蔵するが,ウイルス対策技術は内蔵しない,とAllchin氏は言う。

Longhornは2006年半ばに出る
 Allchin氏はさらにLonghornのロードマップにも触れた。以前レポートした通り,Microsoftは,WinHEC 2005の参加者に対して「Longhornプレ・ベータ1」を提供する。そのバージョンは,新しいユーザー・インターフェース「Aero」こそ含まないが,そのユーザー・インターフェースは以前出荷したアルファ版からは劇的に改良される。

 Allchin氏は,Microsoftが2005年9月にロサンゼルスで開催されるPDC 2005の後に,ベータ版を出荷すると言った。私が見た最新のスケジュールによると,Longhornベータ1は依然として2005年5月末の出荷予定のままである。一方,Longhornベータ2は,PDC直後の2005年10月の予定になっている。だからAllchin氏のこのコメントが,ベータ1が延期されることを意味しているのかどうかは不明である。

 それにしても,Allchin氏は以前私がレポートした重要なことにヒントを与えた。Microsoftは,Longhornを2006年5月までに完成させる計画なのだが,私は以前,同社がそのリリースを「Office 12」(開発コード名)のリリースに合わせるため,2006年末まで延期すると聞いたことがある。

 「われわれは2006年のホリディ・シーズンに(Longhornを)出荷する予定で進んでいるので,それ以前には完成させるだろう」と彼は今回言った。Microsoftにとってホリディ・シーズンは9月に始まるので,多分Longhornは2006年8月か9月には広く利用可能になるのだろう。