こうした計画を実現するために、2003年2月3日から施行された法律が3本あります。これらがいわゆる「行政手続オンライン化関係三法」です。
従来、法令に基づいて行われる行政機関等の手続き(行政機関等が主体または名宛人となる手続き)の中には、書面を意味する用語がある法令も数多くありました。これらの法令がそのままであれば、手続きを書面でなくオンラインで行った場合、法的効力は認められません。そこで、書面による手続きに加え、オンラインでの手続きも可能とするために「行政手続オンライン化関係三法」が整備されました。以下、それぞれの法律について簡単に説明します
●行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(行政手続オンライン化法)
これまで法令で書面によることとなっている行政手続きについては、オンラインでも可能とするため特例規定を整備する内容の法律です。この法律が出来たことにより、オンライン化のために個別の法令の改正は不要となります。また、オンラインで手続きを行う場合には、いつ申請等が相手に到達したものとみなすのかが重要になりますが、送信相手のコンピュータに備えられた時点で到達したものとみなすことも決められています。書面に署名・押印等が必要な場合は、電子署名などで代替が可能となりました。●行政手続等における情報通信の施術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(整備法)
行政手続オンライン化法で包括的に規定する以外に、オンライン化にあたって例外事項等が必要なものについて71の個別法を改正し、それらを束ねて一つの法律としたのが「整備法」です。例えば、不動産登記法、商業登記法など手数料納付のために印紙を添付していたものについては、オンラインでの手続きの場合は印紙の添付ができなくなるため、印紙ではなく現金での納付が可能である、という改正がなされています。また、オンライン化に伴い手続きを簡素化することも含まれており、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)から本人確認情報を提供することで、住民票の写しの添付を省略する事務を171追加し264にするという内容も含まれています。
この点は、「整備法」の国会での法案審議において議論を呼んだ部分です。元々、住基ネット導入の際、衆議院付帯決議でその安易な利用拡大をはからないことがうたわれています。それにもかかわらず、個人情報保護に関する法律が成立していない状況で、住基ネットの利用を拡大することが問題ではないかが議論になりましたが、結果的には、国民の利便性向上を推進するという観点から、「整備法」が成立しました。
●電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律(公的個人認証法)
申請・届出等の手続きをオンラインで行う際、誰がその情報を作成したのか、第三者が改ざんしていないか等を確認することが必要で、その基盤となる高度な個人認証サービスを全国どこに住んでいる人に対しても安い費用で提供できる制度を構築しようとするものです。これによって、希望者は市町村の窓口で申請すれば、都道府県知事の発行する電子証明書の提供を受け、利用することができるようになります。このように、「行政手続オンライン化関係三法」によって、申請・届出、歳出・歳入手続き、納税など広範な手続きを電子化するための一定の基盤が整ったといえるでしょう。