「e-Japan戦略」とは、我が国最初の、国家としてのIT戦略です。2001年1月22日、森喜朗政権(当時)のIT戦略会議の最終報告を受けて「e-Japan戦略」が発表されました。冒頭で「我が国が5年以内に世界最先端のIT国家になることを目指す」という目標が掲げられています。
「e-Japan戦略」では、まず、目指すべき社会として、「国民の持つ知識が相互に刺激し合うことによって様々な創造性を生み育てるような知識創発型の社会」を掲げています。そして、そのような社会を実現するために、5年以内に1000万世帯が超高速インターネットに、3000万世帯が高速インターネットに常時アクセス可能な環境を整備すること、学校のIT教育体制の強化と情報生涯教育の充実、電子商取引市場の大幅な拡大と商法等法制の整備、電子政府の実現などを重点政策として取り上げました。
その後、2001年3月には、「e-Japan戦略」に基づいた具体的な行動計画として「e-Japan重点計画」が策定され、220におよぶ施策が実施に移されました。
分野別に見てみると、例えば、ネットワークの整備関連では、事業者間の競争促進を目指してNTT以外の通信事業者への規制緩和策の導入(2001年)、NTTの地域IP網の開放促進策(2001年)などが進められました。教育関連では、すべての公立学校へのインターネット接続(2001年)、550万人規模のIT基礎学習の実施(2001年)などの施策が実施されました。
電子商取引関連では、既に2000年には電子署名・認証関係の法整備や書面交付義務法制の見直しなどが進んでいましたが、さらに対面行為関連の法制見直し(2001年)や個人情報保護法案の提出(2001年)が行われました。
電子政府関連では、行政事務のペーパーレス化計画(2002年)、申請・届出等手続の電子化(2003年)などが進められています。
森政権を引き継いだ小泉政権では、2001年6月に「e-Japan2002プログラム」を策定しました。これは、2002年度を重点年度と位置づけ、各府省の2002年度施策に反映するプログラムです。そこでは、良質のコンテンツの増大を目標とした「ネットワークコンテンツの充実」や、アジアにおけるインターネット網のハブの役割を担うことを目標とした「国際的な取組み」など、「e-Japan戦略」では見られなかった方針が提示されました。
このような取り組みにより、「e-Japan重点計画」の220施策のうち、初年度2001年に予定されていた103施策は予定通り実施に移されました。しかしこの間も、IT化のうねりは世界的な潮流となり、各国こぞって最優先課題として取組んでいるため、日本が世界最先端という状況には到達することはできませんでした。2002年4月に発表された米アクセンチュアの国別の電子自治体進捗度調査では、日本は前年と同じ17位にとどまりました。
そこで、IT化への取組みをより一層加速させるために、2002年6月、新たな重点計画である「e-Japan重点計画-2002」が策定されました。そこでは、「e-Japan重点計画」の未実施であった117施策に、「e-Japan重点計画」「e-Japan2002プログラム」の成果を評価、さらに国際比較も加えた上で、新たに201施策を加えた318施策が取り上げられました。
次世代の情報通信ネットワーク社会の到来を見据えた“世界最先端”を目指し、例えば、第4世代移動通信システム要素技術確立(2005年)、IPv6の普及促進と国際戦略(2005年)、アジアe-learningコンテンツ国際標準の策定・普及(2005年)、人工衛星を活用した環境モニタリングシステム(2003年)、大容量映像コンテンツの安定的な流通技術の確立(2004年)など、大容量超高速インターネット時代に対応した施策を取り上げています。
このように、「e-Japan戦略」は、インフラ整備や法制の整備、デジタル化への対応という基盤整備の段階から、来るべきユビキタス社会実現にむけた取組みへと大きく踏み出しつつあります。
e-Japan
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