日立総合計画研究所・編

 欧米で政府/地方自治体が政策や事業の検討を行う際、PPP(Public-Private Partnership)が重視されています。PPPとは、日本語では「官民連携」と訳されるのが一般的です。日本においてPPPは、資金面で官民が提携するPFI(Private Finance Initiative)と同義と捉えられ、単なる“資金協力”と思われがちでした。

 しかし最近では日本でも、民間の資金を導入するだけでなく、公共サービス事業を民間に開放し参入してもらう形で連携を進める考え方が広まりつつあります。2002年5月に経済産業省が公開した「日本版PPPの実現に向けて─市場メカニズムを活用した経済再生を目指して─」という中間報告書でもそのような考え方が示され、資金だけでなく事業そのものでの協力も含める認識が広がってきました。

 もともとPPPは、欧米で1990年代後半に普及した概念で、国によって定義が若干異なります。日本でのPPPの捉え方は変わりつつありますが、経済産業省の中間報告書を見ても、主に欧米でのPPPとは大きく三つの点が異なるようです。欧米の場合、政策形成過程の早い段階から官民が協力して事業や政策を検討することが、まず日本との違いとして挙げられます。第二に、日本で見られるような企業と政府との間の連携だけでなく、地域住民やNPO(非営利団体)、大学、地域コミュニティなどの多様なプレイヤーが政策や事業の検討に参加し、連携しています。第三に、支出を伴う事業の場合、政府部門だけがリスクの負担を担うのではなく、民間もリスクを負担するということです。その際、さまざまなリスクを、より適切に管理できる側が負担することで事業全体のリスクを低減しようとすることも特徴です。

 PPPと電子政府/電子自治体は、二つの点で関係があります。第一に、電子政府/電子自治体の構築にPPPが有効であることです。現在、地方自治体は、財政逼迫の状況で、電子自治体を構築しようにも事業資金に事欠いています。さらに、電子自治体ではどのようなサービスを優先すべきか、どのような形態で提供すべきかなどについて、住民や企業などのニーズの収集が課題となっています。PPPを推進し、電子自治体の計画段階から住民や企業などの意見を取り入れてニーズに合致したものを構築するとともに、資金面での課題に対応するため、アウトソーシングが可能な業務については民間に委託する、といった形で電子自治体を進めることが重要となるでしょう。

 第二の関係は、まちづくりや都市計画をする場合です。地方自治体の戦略を策定する際に、地域特性を生かした戦略を策定するためには住民や企業などが参加するPPPが必須になります。互いに異なる利害を持った多様なプレイヤーが戦略策定に参加するためは、合意形成にITの利用が非常に重要になります。例えば、政策立案の専門家ではない住民や企業に説明する手段として、地方自治体がGIS(G地理情報システム)を利用して、地域戦略の内容やその影響を地区ごとに目に見える形で提供することができます。地域戦略策定におけるPPPの効果を高めるために、今後こうした面でも電子自治体を推進することが重要になるといえます。