日立総合計画研究所・編

 近年、住民や企業の政府・公共部門に対するニーズが多様化している一方で、財政赤字の拡大を背景に政府・公共部門がそうしたニーズにすべて応えることは困難になっています。こうしたギャップを埋める存在として、NPO(非営利団体)に対する期待が高まっています。

 NPOは、厳密に言うと、NPO法人として活動している団体と、任意団体として活動しているものの二つに分類することができます。NPO法人は、1998年12月に施行された特定非営利活動促進法(NPO法)に基づいて活動しています。2003年12月31日現在、全国で1万4657団体がこの法律に基づくNPO法人として認証を受けています。NPO法人、任意団体のNPOともに、三つの点でこれからの電子政府・電子自治体に大きな関わりを持つと考えられます。

 第一点目は、電子政府・電子自治体構築の担い手としての関わりです。従来は民間企業や政府・公共部門がシステム構築と行政サービスの提供を行ってきました。しかし、住民や地元企業のニーズを反映させた、よりきめ細かいサービスを提供するには、予算や人材の制約があります。NPOであれば、政府・公共部門の委託先として、利用者の視点に立ったシステムの構築やサービス提供が従来よりも安価にできると考えられます。

 第二点目は、電子政府・電子自治体のあり方などについて、いわゆる「声なき住民」を代表して政府・公共部門に提言していくという関わり方です。住民が個人で電子政府・電子自治体についての意見を表明し、それを政府・公共部門に採択してもらうことは容易なことではありません。NPOは、こうした政策課題について、公平かつ中立的に提言していくことが期待されています。

 第三点目は、電子政府・電子自治体の利用者としての関わりです。内閣府の調査によると、2003年9月末時点のNPO法人の活動分野は、「保健、医療又は福祉の増進を図る活動」、「社会教育の推進を図る活動」が中心となっています。こうした分野は、例えばGIS(以前のキーワードへのリンク)サービスが政府・公共部門から提供されるようになると、介護情報と合わせることで住民にサービスを提供しやすくなるなど、NPOの活動が効率化することが期待されます。

■自治体はつきあい方に、NPOは能力面に課題も

 NPOがより効果的に電子政府・電子自治体に関わっていくためには、今後の課題が二つあります。第一に、政府・行政部門の意識改革の必要性です。つまり、NPOをボランティアと捉え、ボランティア・イコール無償との認識の下で、無償サービス提供の担い手としてNPOとの連携を考えることの問題点です。NPOは無償ボランティア団体ではなく、利益分配は行わないものの、明確な目的達成に向かって対価を受けて活動する組織体です。また、NPOは、国内における新たな産業として成長することが期待されており(座談会「NPOが切り拓く新しい経済社会」)、産業育成の観点からも、NPOにも相当の対価を払うことが求められます。

 第二に、NPO自身の専門性向上です。今後様々なNPOが設立されていく中で、各々が専門性を向上させていくことが不可欠になります。こうした課題を克服することにより、より住民の視点に立った電子政府・電子自治体が構築されるでしょう。