日立総合計画研究所・編

 「GIS」(Geographic Information System:地理情報システム)とは、地図をコンピュータで扱うシステムで、従来、紙の地図で表現されていた道路、建物などの地図情報をデジタル化してコンピュータ上で表示します。

 例えば、道路の幅、交通量、舗装時期などの様々な統計データをデジタル化した地図情報に結び付けることができます。さらにその地図を、拡大・縮小して画面に分かりやすく表示したり、関連情報から地図を検索、解析することもできます。 GIS活用の身近な例としては、カーナビゲーション・システムがあります。道路地図で目的地を簡単に検索したり、目的地までの経路を自動的に計算して表示したりすることができます。

 行政部門でもGISの活用がIT化の重点事項の一つとなっています。政府においても、2002年2月に「GISアクションプログラム2002−2005」を決定し、都市計画の地図あるいは不動産登記の備え付け図面、森林計画図、道路台帳附属図面の19種類の行政が保管している重要な地図について、電子化を進めるべく2003年度から具体的な措置をとる計画です。地方自治体においても、地方自治体で部局間をまたがって共有・活用する統合型GISの普及促進を図る施策を進めていくことなどが決定されました。

統合型GIS導入、さらにインターネットでの情報公開へ

 地方自治体の業務では道路、河川、公共施設、上下水道、環境情報、都市計画、固定資産、防災情報などの様々な地図情報が部局ごとに管理・利用されていますが、これまでは各部局がそれぞれ単独でGISを導入するケースが多かったようです。しかし、近年、地図情報をより効率的に管理・活用しようという認識から、いくつかの地方自治体でGISを部局横断的に展開する統合型GISの導入が始まっています。

例えば、神奈川県横須賀市では統合型GISを導入して、市役所内の情報共有を進めています。まず、共通地図を構成する水道、農業、税務、消防、都市計画の各部局では、各業務に特化したGISを導入し、その情報は基盤データベースとして全庁内に提供されます。そして、共通地図は、その他の地図を業務で使用する部局に提供されます。地図の参照が多い部局では、Webブラウザーを通して共通地図を参照することができるようになっています。

 行政サービス向上のために、地方自治体内の基本図や施設、都市計画の各種地図情報など地方自治体が所有する地図情報をインターネット経由で公開する動きも進んでいます。


西宮市の地図案内サービス「道知る兵衛」

西宮市の地図案内サービス「道知る兵衛」

 兵庫県西宮市は、このようなGISによる地図情報の公開に先進的に取り組んできた地方自治体のひとつです。西宮市では市役所のホームぺージで地図案内サービス「道知る兵衛」を提供しています。そこでは、西宮市の住所を入力すれば、周辺の地図を瞬時に表示することができます。あるいは、分かっている住所がたとえ曖昧であっても住所地図検索によりその場所を見つけることができます。この地図では、行政関連施設だけでなく、NTTタウンページに掲載されている約2万件の施設や店舗を、業種や地域など多様な角度から検索して地図を表すことができます。前述の横須賀市でも「よこすか わが街」というサイトを公開しています。

今後は、統合型GISの環境で、さらに多くの地図情報を重ねあわせることにより、さらに高度な活用を図ることが期待されています。例えば、防災分野で被害予測や災害対応プランを構築する際に、固定資産情報、家屋の構造情報、住民の構成などの情報が活用できればより精度の高いきめ細かな対応が可能になるでしょう。

 地図情報をより分かりやすく感覚的に表示、検索できるGISは、今後の行政部門の業務効率の向上と住民向けサービスの充実の強力な手段であり、今後の電子自治体構築のひとつの柱といえるでしょう。