富士通は4月27日、2004年度(2004年4月~2005年3月)の連結決算を発表した。売上高は前年比0.1%減の4兆7627億円、営業利益は同6.6%増の1601億円。当期純利益は同35.8%減の319億円だった。

 黒川博昭社長は昨年5月に発表した中期経営戦略(参考記事)で、2004年度の目標として、売上高4兆9500億円、営業利益2000億円、純利益700億円を掲げていた。しかし、未達に終わった。業績予想については今年に入ってから2回下方修正しており、4月21日の段階では、売上高は4兆7630億円、営業利益は1600億円、当期純利益は320億円としていた。

 未達に終わった大きな理由は、システム構築(SI)事業の不振である。同社が建て直しに注力していたにもかかわらず、SIを担うソフトウエア・サービス部門の売上高は前年比374億円減の2兆1089億円、営業利益は同257億円減の1130億円と、減収減益だった。

 一方、サーバー機や半導体事業を担当するハード部門は増収増益。売上高は前期比187億円増の2兆6563億円、営業利益は同308億円増の875億円だった。コスト削減効果が出たことや、欧米でのUNIXサーバーの販売などが好調だったことが数値に表れた。しかしこうしたハード部門の好調も、ソフトウエア・サービス部門の不調を補うには至らなかった。

 CFO(最高財務責任者)を務める小倉正道取締役専務は、SI事業の不振の理由として、不採算プロジェクトがなくならなかったことと、国内IT投資の不振の二つを挙げる。

 富士通は昨年度(2003年度)の決算で、不採算プロジェクトで回収の見込みが立たない683億円を特別損失として計上。これを機に、不採算プロジェクトを一掃すべく、営業とSI部隊の一体化、商談の早期段階からの精査といった、さまざまな施策を矢継ぎ早に打ってきた。

 小倉専務は昨年10月28日の2004年度中間決算発表時に、次のようにコメントしていた(参考記事)。「今年(2004年度)下期からは、一連の対策の効果が見えてくる。システム開発体系であるSDASやプラットフォーム体系であるTRIOLEも使って、十分に利益を出せる体質に変わる」。

 しかし利益体質への転換には、もう一歩及ばなかったようだ。2004年度第4四半期(2005年1~3月)に完了するプロジェクトで、損失が予想よりも40億円増加した。また、「大口の不採算プロジェクトに開発リソースを配分したため、SI事業全体の効率が低下し、他のプロジェクトの収益が(予想を)120億円下回った」(小倉専務)。さらに今回の決算では、2005年4月以降に完成するプロジェクトについて、追加損失110億円を新たに計上している。

 結果、今回の決算における不採算プロジェクトの引当残高は、280億円。小倉専務は「金融系、自治体や情報メディア系で不採算額が大きな案件が5~6件あり、280億円の約90%を占めている。ただし、それらのプロジェクトはだいぶ収束してきた」としている。

 不採算プロジェクトの一掃に向けて、新たな策を打つ。4月に黒川社長直轄の「SIアシュアランス本部」を設立。また昨年度からテスト的に始めていた「工事進行基準」を、今年度から本格的に推進する。各プロジェクトの売上高や原価を完成度合いに応じて計上する手法で、赤字プロジェクトの予兆を早期に察知するのが狙いだ。

 IT投資については、「海外については旺盛なIT投資に支えられたものの、国内については投資意欲はまだら模様。力強さに欠けた」(小倉専務)とコメントする。英富士通サービスや米富士通コンサルティングをはじめ、主要な海外子会社の営業利益は黒字になった。

 同社は2005年度(2005年4月~2006年3月)の連結見通しとして、売上高は今期比1.8%増の4兆8500億円、営業利益は9.2%増の1750億円、当期純利益は56.7%増の500億円を見込む。

 この数字を見る限り、黒川社長が昨年5月に中期目標として掲げた、2006年度に営業利益3000億円、純利益1000億円の実現は厳しいと言わざるを得ない。

高下 義弘=日経コンピュータ