富士通は10月28日、2005年3月期の連結中間決算(2004年4月1日~9月30日)を発表した。売上高は前年同期比3.6%増の2兆2200億円、営業利益は332億円だった。前年同期の営業損益は180億円の赤字。中間期で利益を確保したのは、2000年度以来4期ぶり。ただし業績回復は、デジタル家電ブームや新紙幣発行に伴う特需に支えられた面もあり、まだ完全回復とは言い難い。

 セグメント別に見ると、電子デバイス事業とプラットフォーム事業がV字回復を果たし、4期ぶりの黒字に貢献した。半導体製造などの電子デバイス事業は営業利益が前年同期より357億円増え、345億円の黒字になった。小倉正道取締役専務CFO(最高財務責任者)は、「デジタル家電向けのシステムLSIやハードディスク、第3世代携帯電話用の基地局が大きく貢献した」と説明する。ハード/ソフト製品を扱うプラットフォーム事業も前年同期の207億円の大赤字から37億円の黒字へと転換した。新紙幣対応の金融端末装置(ATMなど)が回復を牽引した。

 それに比べてソフト・サービス事業はさえない。営業利益は電子デバイス事業の半分以下の155億円。前年同期に比べると133億円も減った。富士通は、システム構築(SI事業)を含むソフト・サービス事業を今後の中核と位置付けているが、今決算に限れば稼ぎ頭の座を電子デバイス事業に譲った格好だ。

 小倉CFOは、ソフト・サービス事業不振の原因を「昨年より続いている(顧客からの)料金低下圧力に対して、コストダウンが及ばなかった」と説明する。電子デバイス事業とプラットフォーム事業の黒字には、昨年度から実施しているコスト削減が効いている。だが、目に見えないソフトやサービスを扱うソフト・サービス事業では、まだ目に見える効果は出ていないようだ。小倉CFOは「採算性の悪化したプロジェクトについて、新規および追加の損失が発生した」と続ける。

 このことからもわかるように、富士通のソフト・サービス事業はまだ“垢”を落としきっていない。同社は前期の決算で、SI事業の回収不能見込額683億円を特別損失として積み上げている(参考記事)。この683億円に加えて、今年度第1四半期(4月~6月末)ではさらに別途、SI案件約100億円分を特別損失に上積みした。この中間期全体で特別損失は150億円程度になる。「今年度下期では、さらに40億~50億円を特別損失として積み上げる」(小倉CFO)という。

 小倉CFOは「このタイミングで不採算案件を徹底的に洗い出し、SI事業の体質を改善する」と説明する。「今もSIの各事業部から、リスクがあると見られる案件をかなり出してもらっている。ただし、現在の洗い出し作業は、リスク・マネジメントの一環。もとから利益を出すのが無理な案件ばかりではない」と続ける。

 富士通は昨年末から今年前半にかけて、SI事業の改善策を矢継ぎ早に打ち出した。営業とSEを一体化する組織への変更や、商談リスクの管理を専門とする組織「ビジネスリスクマネジメント室」の設置がそれだ(日経コンピュータ2004年3月22日号166ページ~173ページを参照)。実はこれらの改善策の実行は、昨年度後半に決定した“SI特損”の積み上げと連動している。「今年下期からは、一連の対策の効果が見えてくる。システム開発体系であるSDASやプラットフォーム体系であるTRIOLEも使って、十分に利益を出せる体質に変わる」と小倉CFOは言い切る。

 赤字を垂れ流してきた海外のSI事業は、ようやく黒字基調に乗った。英・富士通サービスでは、昨年度に獲得した英国政府の大型商談による増収効果が見られている。中間期は1600万ポンド(約31億円)の営業利益、通期では6000万ポンド(約116億円)の営業利益を見込んでいる。米国の富士通コンサルティングでは事業構造の改善効果が出ており、通期で1000万ドル(約10億円)の営業利益を見込んでいる。

高下 義弘=日経コンピュータ