富士通の黒川博昭社長は26日、2004年度の経営方針を発表した。黒川社長は2004年度の目標を、売上高4兆9500億円、営業利益2000億円、純利益700億円に設定した。営業/純利益は2003年度の1.3~1.4倍である。

 さらに2006年度の中期目標を、営業利益3000億円、純利益1000億円に据えた。黒川社長は、「市場の急激な拡大はあり得ない。コストダウンなど『内部の戦い』に挑むことで、2006年度に純利益1000億円を達成する。決して不可能な数字ではない」と言い切る。

 富士通の2003年度の決算結果は、売上高4兆7668億円、営業利益1503億円、純利益497億円(過去記事)。これについて黒川社長は「当初の目標を達成した」としたうえで、2004年度を「スタートライン」と称した。コストダウンなど“専守防衛”の策が中心だった昨年度とは対照的に、攻めに転じるからだ。

 目標を実現するべく打ち出した方針や施策は、以前に日経コンピュータが報道した内容とほぼ同じ(関連記事、IT Proへの登録が必要です)。基本方針は、既存ビジネスの体質強化、新規事業の創出、トヨタ自動車の経営手法を導入するなどマネジメント体制の革新、といったものだ。

 今回の発表で目新しい点は特に、ハード/ソフト事業を担当するプラットフォーム事業と、システム構築を担うソフト・サービス事業の施策に見られる。

 まずプラットフォーム事業。黒川社長はIAアーキテクチャを使った高性能Linuxサーバー(コード名「プレアデス」)を、2005年4月~6月に投入することを明言した。黒川社長は「プラットフォーム事業担当の伊東(千秋常務)らには、この投入時期を死守しろと命じている」と話す。さらに、メインフレームのGSシリーズについては2006年に新機種を投入する。「約4000のGSユーザーのアプリケーション資産を継承する」(黒川社長)。

 ソフト・サービス事業については、プロジェクトマネジメントを強化する。各プロジェクトごとに月単位で売上高や原価を計測し、赤字プロジェクトの予兆を早期に察知する。

 5月には富士通サポートアンドサービス(Fsas)の完全子会社化を決定しているが、グループ子会社の再編をさらに進める。「事業や地域の重複を少なくし、効率化と開発リソースの強化を進める」(黒川社長)ためだ。7月には、東北地方のシステム開発子会社である、富士通青森システムエンジニアリング、富士通秋田システムエンジニアリング、富士通東北システムエンジニアリングを合併させ、富士通東北システムズを設立する予定である。黒川社長は「2004年度は統合・再編をさらに進める」と宣言する。

 グループ外の協力会社との関係も強化する。約2000社の協力会社のうち、特に重要と判断した主要企業200社を「コアパートナー」と位置付ける。富士通はコアパートナーに対して開発体系「SDAS」を無償提供したり、富士通のシステム開発子会社と同等の教育プログラムを提供したりする。この4月から開始した制度である。

 施策の内容を概観すると、「それをやり遂げれば一定の効果はある」と納得はできるものの、1000億円の利益を確実に達成するための抜本策とは言い難い。特にソフト・サービス事業についてはすでに米IBMなど他社が実行している施策ばかりだ。

 正攻法で十分かもしれない。だが正攻法で手間取っていると、その間にライバル企業は抜本策を戦略的に打ち出して、もっと先に進んでしまうおそれがある。黒川社長は6月に就任2年目を迎える。その経営手腕が、いっそう厳しい眼にさらされる時期に突入した。

高下 義弘=日経コンピュータ