米連邦取引委員会(FTC)は,「スパムを阻止するための『Do-Not-Spam(迷惑メール拒否)』法令によるリスト運用を先送りし,電子メール認証技術の標準開発を支援する」とする決定を米国時間6月15日に発表した。

 FTCは,「スパム対策として,セールス電話を阻止することを目的する『Do-Not-Call(迷惑電話拒否)』リストのような技術が役に立たないだろう」とコメントしている。これは,悪質なマーケッタがリストを有効な電子メール・アドレスの情報源として利用する可能性があるからだという。

 FTCのTim Muris委員長は,「Do-Not-E-mail」リストへの登録は,消費者にとって効果がなく厄介なものになるだろう,と記者会見において述べている。「登録の仕組みを設けても設けなくても,消費者はスパムを送りつけられる。インターネット標準化団体が検討しているSPF(Sender Policy Framework)やDomainKeysのような対スパム技術の方が期待できる」と付け加えた。

 前年制定された連邦初の対スパム法Can-Spam Actは,FTCに対して登録の仕組みを設けることを強く勧めているが義務付けてはいない。同法律はFTCに対し,全米規模のDo-Not-E-mailシステムを設立するための計画と予定を明確にした報告書を作成して,6月半ばまでに議会に提出するよう求めていた。また,この案に対する「実務,技術,セキュリティ,プライバシ,権利行使,その他の懸念事項」を盛り込むことになっていた。

 FTCが作成した報告書は,「現在の状況下で,全米規模の『Do-Not-E-mail』登録システムを運営しても,スパム問題に対し何ら有益な効果をもたらさないだろう」と結論づけている。

 米BrightmailのCEOであるEnrique Salem氏は,FTCの決定に対し「電子メール・インフラを守るために次の重要なステップが認証技術だと認識しているFTCに賞賛を送りたい」と述べている。同法令は,スパムを規制する最初の法令として重要だったとしながらも,同法令によるリストへの登録よりもフィルタリング技術がスパムの識別と遮断により有効であるとコメントしている。

 また,同法令に反対していた米Direct Marketing Associationは,「そのような連邦法はeコマースの発展を妨げ,スパムの削減にはまったく役に立たないだろう」とコメントした。

◎関連記事
「消費者はスパムに対する法令制定を求めている」――米調査
Microsoft,迷惑メール対策技術Caller ID for E-Mailを競合するSPFと統合
なんと罰金100万ドル! スパム禁止法は迷惑メールを減らせるか
FTC,米国とオーストラリアのスパム送信業者2社を告訴

発表資料(1)
発表資料(2)