米Advanced Micro Devices(AMD)と米Transmetaが米国時間5月25日に,次世代マイクロプロセサに関してライセンス契約を結んだと発表した。Transmeta社はAMD社から64ビット・アーキテクチャ「x86-64」とバス技術「HyperTransport」のライセンス供与を受け,将来のx86プロセサや技術開発に利用する。

 「HyperTransport技術が次世代バス標準に向けた正しい選択であると確信している」(Transmeta社製品開発部門執行副社長のDoug Laird氏)。

 「今回発表した両社の提携は,業界全体に恩恵をもたらすだろう」(AMD社Computation Products Group部門副社長兼CTOのFred Weber氏)。

x86-64

 x86命令セットを64ビットに拡張するアーキテクチャで,既存のx86命令とのバイナリ・レベルでの互換性を維持する。

 x86命令に64ビット長アドレスや64ビット長オペランドを扱える命令を追加する。これらは「long mode」と呼ぶ動作モードで動く。long modeはさらに二つのサブモードから成る。64ビット・モードと互換性モード(comaptibility mode)である。

 64ビット・モードでは,64ビットの命令コードに対応する。デフォルトのアドレス空間は64ビット。デフォルトのオペランドは32ビットである。このデフォルトの設定はプレフィクスを使うことで命令ごとに変更可能である。「REX」と呼ぶプレフィクスを使えば,64ビットのオペランドとx86-64で新たに追加したレジスタ(後述)を利用可能になる。64ビット・モードへの移行は,コード・セグメントごとに可能になっている。

 8本の64ビット・レジスタを新たに加えた。R8-R15と呼ぶ。既存の汎用レジスタも64ビット幅にする。ポインタも64ビット長である。さらに128ビットの浮動小数点レジスタも8本追加した。これらをStreaming SIMD extension(SSE)レジスタと呼んでいる。

 互換性モードは,64ビットOSのもとで既存のx86アプリケーションを動かすためのモードである。オブジェクト・コード・レベルでの互換性を維持する。ただしアクセスできるアドレス空間は4Gバイトである。互換性モードへの移行は,コード・セグメントごとに可能になっている。

 なおx86-64はlong modeのほかに,x86 legacy modeも用意する。これは,既存のx86ベースのソフトウエアとオブジェクト・コード・レベルでの互換性を維持するモードである。

HyperTransport

 高速かつ高性能なポイント・ツー・ポイント接続のLSIに向けたバス技術。「パソコン内のLSIやネットワーク,通信機器間のデータ伝送速度をこれまでに比べ最大48倍にまで高めることが可能」(両社)という。

 HyperTransportのデータ伝送速度は12.8Gバイト/秒。PCIをはじめ,InfiniBandや10GビットEthernetを補完する技術と位置づける。

 なおAMD社によると,米Broadcomや米Cisco Systems,米Sun Microsystems,米NVIDIAなどがHyperTransportの採用を予定していることを明らかにしている

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[transmeta.comに掲載の発表資料]
[amd.comに掲載の発表資料]