「リアルインタビュー」第2弾!
あのビジネス・パーソンが素顔と肉声で登場します。


 IT Proは,新しいインタビュー番組 「リアルインタビュー」をスタートさせました。IT関連分野の注目の キーパーソンを選定,その素顔に迫ります。
 豊かな表情をとらえた動画像, 発言の真意がくみとれる音声,細かなやり取りが分かるインタビュー全文 テキスト。これまでのインタビュー記事とは全く異なる新しい試みです。
 どうぞ,お楽しみください。


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【 第2回 】 松井証券社長,ネットビジネスを強烈に説く
(2002年5月31日公開)

ネット証券最大手の松井証券が絶好調だ。
2002年3月期決算では,営業利益43億円(同45%増),経常利益39億円(同31%増)を叩き出した。個人株式市場における信用取引の買い残高では,野村証券を抜くほどの勢いである。
4年前にネット証券ビジネスを決断した松井道夫社長は,「自ら描いたシナリオを遙かに上回る現実が展開された」と驚きを隠さない。成功の秘訣は,「顧客の行動がネットの出現でどう変化したかをデータで分析したことにある」と言う。
「インターネットだけで成功したという認識は間違い。10年間にわたるリストラの成果が力の源泉だ」。 そして,それに次ぐ英断が5月7日に実施した新システムへの全面移行である。
(聞き手は日経BP・編集委員,上里 譲)

※インタビュー全文(ノーカット・無修正版)は,こちら

まつい みちお 氏
1953年生まれの49歳。76年一橋大学経済学部を卒業後,日本郵船に入社。87年4月に松井証券に転職。88年法人部長,90年常務・営業本部長を経て,95年社長に就任。


日本郵船から松井証券へ
海外赴任の夢,かなわず


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 松井道夫氏は1976年に一橋大学を卒業後,海運業最大手の日本郵船に入社。理由は「海外で仕事をしたかったから」。その後11年間,港やコンテナ輸送などの仕事に携わったが,「1度も海外赴任できず,切なく思った」。そんな折,義父(元・松井証券社長)から「このまま日本郵船にいて何ができるんだ」を言われ,「これも運命か」と87年に転身を決意する。

 8年後の95年に松井証券の社長に就任するが,それまでの間に「顧客は証券仲介業に営業を望んでいない」という信念を抱くようになる。「完全な仲介業に徹して低コスト体質を築けば,株式手数料の自由化を十分勝ち抜ける」という読みである。早速,営業担当者の削減と店舗の縮小というリストラ策を断行。猛烈な反発と戦いながら,98年に国内初の本格的なネット証券事業に参入するまでには,営業店舗ゼロの体制を整えた。リストラの過程ではコールセンターによる電話注文をメインに据えたが,インターネットの大波に乗って,「ネットの松井証券」が出現したのである。

最も苦しかったこと
10年間のリストラが力の源


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 松井氏が海運業から証券業に転身して驚いたのは,営業コストが高すぎたことだった。なにしろ,松井氏は「コストは顧客が決める」という強烈なイノベーションを日本郵船で目の当たりにしている。証券業がごう慢に映るのも無理からぬことだ。「松井証券をインターネットの会社と認識している人が多い。だが実際は,10年間のリストラの延長戦上にオンライン・ビジネスがある」と強調する。「もし日本郵船での経験がなく,銀行や大手証券から移ってきたら,こんな発想は持てなかったし,今の実績もなかった」と振り返る。



ネット証券で勝った理由
取引が頻繁になるのは,時代の要請


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 1999年前後,日本国内に数え切れないネット証券が生まれた。そのなかで松井証券が勝った理由は何か。思い切ったリストラによる低コスト体質だけでは,新興勢力と渡り合うのが難しい。松井氏は個人株式市場で成功した秘訣を次のように話す。「静態分析だけでは見誤る。動態分析のデータを持っているのは松井証券だけ」。他のネット証券会社と違って,松井証券は1917年に創立した会社だ。つまり,4年前までは普通の個人顧客が電話などで株を売買していた。その行動パターンが,ネットへの移行で激変したというのである。その傾向を詳しく分析すれば,適切なプランを立てやすい。

 データ分析により独自のシナリオを描き,事業規模に応じたシステム投資などを実施したのである。「個人株式市場の売買高に占めるオンライン取引のシェアが半分近くまで来たという人がいるが,これは静態分析。株式保有額に占めるシェアで見たら,オンライン取引全体でも数パーセントにすぎない。ということは,まだまだ成長する余地がある」と見る。これまで思い切ったシナリオを描いてきた松井社長ですら,「これまでのシナリオは,ことごとく外れた」と回顧する。ダイナミックな現実に限りなく近づくための新しいシナリオを模索する日々だ。



IT戦略の発想
新システムにすべてを託す


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 松井証券は5月7日,新システムを稼働させた。新システムは日本フィッツと共同で開発したもので,これまで大和総研に委託していたバックオフィス業務(主に株式約定以降の処理)と,独自開発のフロントオフィス業務(主に約定前の処理)を新システムに全面移行。今後の事業拡大をにらんで,フロントとバックを統合した分散型システムを採用した。日本フィッツと提携したのは,同社が証券業務を熟知したプロ集団であることが大きい。日本フィッツはCSKの関連会社で,旧・山一証券グループの社員たちが中核を担っている。松井社長は「システムのデザインは我々の仕事だが,開発や運用はプロに任せたい。そのとき,証券業務を熟知した集団なら安心して任せられる」と話す。しかも新システムは,近い将来に導入が予定されている「T+1」問題(証券翌日決済)に対応済みであり,その点も大きな評価につながった。

 新システム稼働当日は,大きなトラブルに見舞われた。予想をはるかに超えるアクセスが発生したため,システムの応答速度が極端に遅れたのである。「お客様から見るとシステムが止まったように感じられたはず。多くのお叱りを受けたが,見積もりの甘さに弁解の余地はない」と松井社長。急いで対応したため,翌日からは正常の応答速度を確保したというが,手痛いスタートとなった。ただ,松井社長は「新システムへの移行は,過去のリストラやオンライン取引参入と同じくらい大きな決断だった」と胸を張る。今後の事業拡大を考えると,スケールメリットを追求する意味は大きい。2002年3月期に旧システムの早期償却を約8億円計上。今期を併せて10億円規模の経費をかける。「自社で保有するシステム資産はなくなり,日本フィッツへの手数料だけがシステム費用になる」(松井社長)。



座右の銘
「自由を求め,自分の頭で考える」


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 多忙な松井氏は,休日にゴルフや植木でリフレッシュする。とくに最近始めた草花の栽培は,「植物が育っていく様を見ていると飽きない」と微笑む。ゴルフはハーフを年齢以下の打数で回る「エージシュート」を目標に掲げている。車は自ら運転できないが,「ポルシェが欲しくなる年齢になった」。座右の銘を尋ねると,「偉人の言葉はその時代背景だから生きるのであって,あまり参考にならない。自分だけの座右の銘を考えたいが,今のところは『自分の頭で考える』と答えることにしている」という。最近読んだ本で印象に残っているのは,ミヒャエル・エンデ(20世紀を生きたドイツの思想家)の著作。「ある種,物事の本質をついていて,考えるための参考になった」。そのほかマックス・ウェーバー(19~20世紀を生きたドイツの思想家)などを改めて読むという。「自分の頭で考えるということは,とりもなおさず自由を求めるということだ。自由を放棄したら人間じゃない」と力説する。



若手ビジネス・パーソンに向けて
「変革の歴史を勉強しよう」


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 大きな組織で働く若手ビジネス・パーソンに向けて,松井氏は次のようなアドバイスを贈る。「明治維新を始めとして,国内外の変革の歴史で若者がどのように行動したかを勉強して欲しい」。「組織に拘束されて大変な思いをしているのは重々承知している」と前置きしたうえで,次のように締めくくった。「今は変革期なのだから,組織は自分で作るべきだ。社内で難しければ外に出るしかない。それで失敗しても本望だろう。命まで失うわけじゃない。どうせ組織の中にいても死ぬんだから」。


  撮影・編集協力:三井公一,梅澤健哉
  (サスラウ・インコーポレイテッド)

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