ソフトウエアのロボットを使ってPCの定型業務を自動化する技術であるRPA。働き方改革の切り札として有望だが、現場担当者のある思い込みで活用が阻まれる恐れがある。
働き方改革の切り札として、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)に注目が集まっている。PCを使った定型的な作業を、ソフトウエアのロボット(ソフトロボ)によって自動化する技術だ。
当社でも米オートメーション・エニウェアのRPAツール、Automation Anywhereを使ってソフトロボを導入し、PCの定型業務を自動化。現在までの取り組みでは、人事総務部門で130時間/月、財務などの間接部門で300時間/月のPCの定型作業を削減することができた。現場担当者は、社員が働きやすくするための企画業務など、本来取り組みたかった仕事により多くの時間を割り当てられる成果を得ている。
このように、適切に導入すれば、PCの定型作業を自動化でき、成果が得られる。働き方改革の支援に入った顧客企業でも、PCの定型作業が多い現場に対して、RPAの導入提案をしている。
「うちの現場のPC作業は複雑」という考えではRPAの導入は進まない
その時、筆者はある「RPA導入を阻む厄介な存在」を感じることが少なくない。現場担当者にRPAの導入を進めると、「受け入れにくい」という反応を得る。理由を聞くと「現場でやっているPCを使った仕事は単純ではないから」という返事が返ってくる。これが今回取り上げる厄介な存在の実体である。
筆者はその返事を聞くと、「それは果たして本当なのだろうか」と疑問を持つようにしている。「複雑だ」と答えるケースのほとんどは、PC作業は担当者が属人的に進めていて、全体像が見えていないからだ。または担当者の具体的な作業が見えていないこともあるだろう。
全体像と具体的な作業が見えていなければ、「この部分はRPAで代替できる単純作業だ」といった気づきも得られない。そこでこういったケースでは、PC作業の棚卸しにまず着手。その中から面倒で単純な作業を見つけ出すようにしている。
筆者がPC作業の棚卸しを提案すると、「そんな業務を整理する余裕はない」という声が上がってくることが少なくない。しかし、「自動でやってくれたら楽だ」というPC作業は必ず潜んでいる。「そんな作業を見つけて自動化しましょう。そうすればこれまでの仕事の効率はぐっと上がります」と訴えて、現場担当者の協力を得ている。