「災害発生時に生産拠点の影響を調査し対策するまで、平均1週間で完了している」。2016年からこの3月までに10回を超えるBCP(事業継続計画)を発動した、富士ゼロックス 調達本部 中央調達部 第一資材調達グループの杉山香織 機能部品チーム長はこう話す。
部品番号だけで16万を数える同社にとって、自社拠点や部品メーカー工場の被災はサプライチェーンを直撃する。災害がビジネスに与える影響分析に活用しているのが「調達BCPシステム」だ。生産計画や在庫状況、取引先情報などを集めてあり、様々な切り口で調達にかかわる全社の情報を連携できる。
地震や火山噴火など自然災害が発生した場合は、地図上から近隣にある自社倉庫や取引先工場を把握。被災状況を確認したうえで、影響を受ける部品や発注計画などを見極め、必要であれば代替手段を探す。
2016年4月に発生した熊本地震では、物流倉庫15カ所など生産施設に影響が出たため、代替生産に踏み切った。「東日本大震災のときは情報把握から代替生産まで6カ月かかったが、熊本地震では2カ月で済んだ」(杉山チーム長)。
DR対策で費用が2倍以上に
災害は繰り返され、ビジネスやシステムの停止は実際に起きている。しかし国内でBCPやディザスタリカバリー(DR)の対策が進んでいるとは言い難い。
DR対策を取り巻く代表的な課題は対策費用の高さだ。通常使うメインサイトに、DRサイトや回線費用などが上乗せされ、全体費用が2倍以上に跳ね上がる。DRサイトは万が一のときの保険に過ぎないので、高額な投資に踏み切れない。
こうした課題を解決する手段として、クラウド活用が注目を集めている。