エレクトロニクス分野は、BtoB・IT商材の中でも技術的要件が高く、市場が寡占化されやすいため、潜在的なユーザーへの啓蒙が重要になります。この分野では、どうやってPRを実践し、コミュニケーションを革新していけばよいのでしょう。
今回は、マーケティングとPRで使うメディアを、マスメディアや市場調査会社によるレポートだけにとどめず、ユーザーコミュニティーや学術研究者まで幅広くとらえ、少人数による運用で成果を上げている事例を取り上げます。取材したのは、FPGA(Field Programmable Gate Array)メーカーで、米国に本社があるザイリンクスの日本法人です。
日本と韓国のマーケティング部門を率いているのは、ザイリンクス日本法人グローバルセールス アンド マーケット マーケティング部(以下、マーケティング部)のシニアマネージャー 神保 直弘氏です。
ユーザーのデザイン確定サイクルを早く回す少数精鋭チーム
ザイリンクスは、FPGAを発明したことで知られています。FPGAは、いわば空の箱、現場の担当者が自由にプログラムを書けるハードウエアと考えるとよいでしょう。
信頼性が高く消費電力が低い、製造委託の手間を省きながら製品デザイン確定のサイクルを早く回せる、ハードウエア記述言語を使わないためソフトウエアエンジニアでも簡単にプログラムできる、といった特徴がエンジニアに評価されています。同社製品の周辺には、独自のユーザーコミュニティーが育っています。
ザイリンクスのFPGA製品の用途は、従来の試作機や通信から、今では自動車やクラウドコンピューティングなど8分野約40種の組み込みアプリケーションに広がっています。これに伴い、ハードウエアエンジニアだけでなくソフトウエアエンジニアにユーザーが広がっています。
ザイリンクスの全世界の社員数は約3500人で、10万人規模の企業もあるFPGAメーカーの中では小規模です。ザイリンクス日本法人は世界の売り上げの10%近くを占めるものの、社員数は50人程度。マーケティング部門を少数で運営できるよう、選択と集中を重視しています。