労働力不足が深刻化する中、スマートフォンやデジタルコンテンツを効果的に活用することで、企業は経営だけでなく働き方全体を改善できます。マニュアル作成共有サービスを提供するスタディストは、企業理念である「伝えることを通して社会貢献する」を形にするための広報PR活動を進めています。前回に引き続き広報室シニアマネージャーの朝倉慶子氏の話から、新しいビジネスモデルを展開するベンチャー企業で、柔軟に事業推進を担う広報PRの体制と改善策を考えます。

スタディスト 広報室シニアマネージャーの朝倉慶子氏
スタディスト 広報室シニアマネージャーの朝倉慶子氏
撮影:松本 敏明
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報道対応に閉じないマーケティング視点の広報

 朝倉氏は広報活動の目的を、「かかる時間」と「社会への影響度」の二軸で整理しています。この図を基に、自社の現状を確認し、これに沿った広報PR活動を運営しています。この図は社内に共有することで、全社の現状認識に役立てています。

スタディストの広報の目的
スタディストの広報の目的
出典:スタディスト社員向け説明資料
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 スタディストが現在提供する商材は、法人マニュアルクラウドサービス「Teachme Biz」の一つだけです。このモデルは、ユーザー企業に商材名を訴え、浸透させるという点では有利といえるでしょう。

 その一方で、広報としては別の商材のニュースを出せないという課題を抱え、営業的にはクロスセルができないという問題に行き着きます。そこで、同社は事例を通じて新しい切り口を作ることに力を注ぎ、単独の商材しかない状況でもメディア露出を続けられるよう、情報発信を工夫しています。

 広報PR活動は原則、朝倉氏が一人で企画しています。ここで心がけているのは個別の活動と企業理念や経営方針が乖離しないように、頻繁に代表取締役の鈴木 悟史氏と密接にコミュニケーションを取ることです。

 広報経費は取締役CFO山下 公平氏に、半期ごとに申請し予算化しています。経費の追加は必要に応じて申請できる仕組みとしているため、広報PR活動が予算にしばられて停滞するといったことはありません。

 広報PR活動についての裁量を持たされている朝倉氏は、その活動範囲を純粋な報道に限定せず、マーケティングの視点を持って拡大しています。前編で取り上げた2015年のIBUKIの例では、テレビ番組のディレクターとユーザー企業をつなげるところから始めました。

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