ITproマーケティングは、2016年9月30日に「BtoBセールス&マーケティングSummit 2016 Autumn」を開催した。基調講演に登壇した京都大学経営管理大学院 院長 京都大学経営管理研究部教授・経済学研究科教授 若林 靖永氏は、マーケティングの考え方や手法がデジタルで変わり、さらにその変化が加速している状況を解説した。「デジタルで変わるマーケティング、変わらないマーケティング」と題した講演では、デジタル化の進展に伴いBtoBマーケティングがどう変化し、今後どの方向に進むのかについて説明した。
デジタルによってマーケティングの変化が加速
講演の冒頭、若林氏は講演のテーマについて触れ、「デジタルで変わるマーケティングと変わらないマーケティングがある。デジタルで変わるマーケティングでは、その変化がデジタル化でさらに加速している」と切り出した。
若林氏は、まず顧客の購買行動プロセスの分析がデジタルによってどう変化してきたかを説明した。ここではマーケティング活動の中で顧客との関係をマネジメントすることが重要になる。
顧客の購買行動が変われば、必然的にマーケティングも変わる。例えば、以前は「部屋を綺麗にするために掃除機を買う」というように、顧客である消費者が何らかの問題解決のために消費購買行動を取ると考えられていたという。
その後、消費者が欲しい商品に関する情報を大量に集めて購入するというように、情報を精緻化してから購買行動を決める「精緻化見込みモデル」が登場した。ただし実際には「いつも使うシャンプー」を購入するなど、消費者はあまり深く考えずに気分や感情、ブランド、評判などによってモノを買うことが多い。
「BtoBの世界でも、このように情報処理をするプロセスと、しないプロセスの二つのモデルが存在する」(若林氏)。そのうち、情報処理をするプロセスがデジタルによって大きく変わろうとしているという。
BtoBマーケティングで営業部門のアプローチが変化する
例えば、以前であれば商品やサービスに関する情報は、家族や友人同士など「閉ざされたグループ」(若林氏)をターゲットに、テレビやラジオ、新聞、雑誌などのマスメディアを通じて一方的に送られてきた。ところが「デジタルによって消費者のコミュニケーション行動が大きく変わった」と若林氏は指摘する。