今回は、IoT(Internet of Things)時代の商品・サービスを象徴する「リビングサービス」というコンセプトを通じて、デジタルマーケティングを含む顧客体験の重要性の増加が、企業経営にどのような影響を与えるのかを考えていきます。
顧客体験が主戦場となる新たな時代
まずは「リビングサービス」の前提となる、顧客体験(Experience)について考えてみましょう。1999年に出版された「経験経済(The Experience Economy)」の中で著者のB・J・パインⅡとJ・H・ギルモアは、「企業が単に製品やサービスを生活者に提供するだけではなくなる時代がやってきた」とし、経済価値の発展を、下からコモディティー、製品、サービス、顧客体験という4層のピラミッドで表現しました。そこでの顧客体験は、「高いロイヤリティの獲得を可能にする、記憶に残る情緒的で特別な体験」と定義しています。*1
それから15年以上がたち、デジタル技術の進化が急速に進んだことにより、ビジネスモデル構築のハードルが劇的に下がり、あたかも「考えていたことがすべて実現できる」かのような時代になりました。また生活者のニーズの高度化と、変化のサイクルの高速化が進んだ結果、固定的な事業ドメイン内での他企業と比較したポジショニングや、自社の競争優位点が起点となるのではなく、まさに「顧客体験」が主戦場となり、企業が業界を超えて競争し合う新たな時代が到来しているといえます。
デジタル化の第三の波の到来
アクセンチュアではリビングサービスを、90年代後半のPCによるインターネット利用の登場、2000年代のスマートデバイスの普及に続く、デジタル化の第三の波と位置付けています。
*1 書籍『経験経済(The Experience Economy)』B・J・パインII, J・H・ギルモア