本連載では、顧客~チャネル~オペレーション~テクノロジー~組織/人材を横断的に見ながら、デジタルマーケティングのあるべき姿を考察してきました。最終回となる今回は、顧客体験の重要性をおさらいした上で、変革へのステップを三つに分けて説明し、連載を締めたいと思います。
顧客体験向上のカギは“連携”
デジタル化やグローバル化の進展によって既存の競争原理が業界や国境を越えて破壊されつつある中、企業は従来のマーケティングや広告の業務領域を超えた活動を迫られています。具体的には、R&Dや製造・物流、販売、サービスを含めたバリューチェーン全体で、データから得たインサイトを活用し、これまでにないスピードと粒度で顧客一人ひとりとの関係性を深めていくことを求められています。一方、ソーシャルやモバイルをはじめとしたデジタルテクノロジーを活用することで、企業は従来に比べて顧客一人ひとりの顔が見えるようになってきました。
顧客にサービスや商品を使い続けてもらう長い道のりの中で、心変わりされずに長く関係を保つ手法の一つに、「パーソナライズドマーケティング」があります。個人の興味関心に合ったサービスやコンテンツを、企業がそれぞれ最適なタイミングとチャネルで提供して、関係性を深めていくマーケティング手法です。
しかし、顧客が利便性の高いサービスに慣れ親しんでいる現在、従来のマーケティング活動の範囲だけでは、顧客の期待を満たすパーソナライゼーションの実現が難しいことも事実です。そのために、企業内のプロモーション部門だけでなく、セールス部門、サポート・サービス部門などが横串で(横断的に)、共通の目的や狙い・指標を持って連携することが重要になっています。
これがないと、部門間でブレが生じ、結果的にマーケティング活動がプロセスではなく“点”のアクションになりかねず、事業への貢献や継続的なエンドユーザーとの関係構築につなげられなくなってしまいます。
さらに自社だけではなく、外部のパートナー企業などとの連携による広汎なエコシステムを活用する動きが始まりました。新しいサービスやビジネスを創出し、新たなユーザー層とのタッチポイントを増やすことが可能になります。
この時、特に顧客の行動を基軸にエコシステムを設計することも重要です。これにより顧客接点が単なる“点”ではなく“線”になり、その線上で顧客にもたらした体験の全てが顧客をより深く知るためのデータとして蓄積され、パーソナライズドマーケティングを加速できるようになります。