カスタマージャーニーマップを作るときの考え方には2種類ある。よくある考え方は、個別の接点で顧客を啓蒙・誘導していく「接点最適ファネル型」である。しかし、この考え方は万能ではない。顧客ロイヤルティ向上を目指すときは、もう一つの「信頼貯蓄型」の考え方を理解しておく必要がある。

 前回のコラムでは、カスタマージャーニーマップを社内で有効に活用してもらうための、作成の進め方の工夫について解説した。今回は、カスタマージャーニーマップを作るときに、全体を通してどのような設計思想が必要になるかについて解説する。

 ビービットでは、カスタマージャーニーを設計するときの思想は大きく2種類あると考えている。「接点最適ファネル型」「信頼貯蓄型」である。前者のような、ファネルに近いカスタマージャーニーが有効であることも多いが、後者の思想がなければうまくいかない場合もある。

「接点最適ファネル型」ジャーニー

 よく見られるカスタマージャーニーの設計思想は、顧客を購買というゴールに向けて啓蒙・誘導するというものである。これは、顧客との接点それぞれでのコミュニケーションを最適化することで、顧客をゴールへと導いていくという手法である。自分たちが想定したコースの上を、顧客をピンポイントに誘導しながらゴールへ向けてたどってもらうという点で、ファネルマーケティングに似た発想といえる。

 例えばある金融機関では、既存顧客に新しい金融商品を利用してもらうためにファネル型のカスタマージャーニーが使われていた。その中では、SNSを使い日常的な接触頻度を高め、コンテンツを通じて資産運用の大切さを学んでもらい、興味が喚起されたユーザに新商品のお知らせを送るという流れとなっていた。

 このようなアプローチは、新たな購買を生み出すためにはとても重要であり、大きな効果を生むことも多い。しかし、このアプローチは常に有効というわけではない。カスタマージャーニーをファネルの一種として扱うだけでは、不十分になってしまう場合もある。

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