ITproマーケティングが開催した「BtoBセールス&マーケティング Summit SPRING 2016」で、フロムスクラッチの代表取締役社長 安部 泰洋氏は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの可能性と導入における課題を示した。「2016年の最新BtoBマーケティング・セールス戦略の課題と展望 ~いま、成長企業が取り組むマーケティングオートメーションの本質を最新事例から読み解く~」と題した講演で、企業がMA導入に当たって「失敗しない」ポイントを、事例を交えて解説した。
マーケティングオートメーションは「魔法の杖」ではない
安部氏はセミナーの冒頭、最近のBtoBマーケティングの領域で「バズワードともいえるのが、MAだ」と語り、その注目度の高さを指摘した。安部氏によれば、MAツールを導入する企業が増えている一方、「導入したが活用しきれていない」、あるいは「導入しても効果がでない」という企業も多いという。
「MAとは何か」という問いに対する、安部氏の回答は明確だ。「OnetoOneマーケティングを実現するソリューション」である。MAを正しく理解するには、OnetoOneマーケティングと従来のマーケティングと違いを正しく把握しておかなくてはならない。
安部氏は、「従来のマーケティングは、企業側の視点でターゲットをセグメントしてアプローチする、いわば一方通行の『ワンウェイ』のマーケティングだった」と指摘。それに対して、「顧客立脚のマーケティングがOnetoOneマーケティング」(安部氏)という。顧客の属性情報や行動情報に応じて、最適なタイミングで求められる情報を提供することがOnetoOneマーケティングであるとした。
安部氏は、OnetoOneマーケティングと従来のマーケティングとの違いを正しく把握し、その上でMAツールを導入したとしても、それだけでは、OnetoOneマーケティングを実現できないという。「MAは『魔法の杖』ではないことも理解することこそ重要」と語った。
放置されていた価値に気が付くことこそMAの出発点
ではなぜ今になって、多くの企業がMAツール導入に動き出しているのか。安部氏は「その理由の一つに多くの企業が『見込み客の壁』に直面している現状がある」と語った。
ある企業の営業社員が1カ月で新規に30件の顧客を訪問するとして、その受注率が10パーセントなら、毎月3件受注できる計算になる。多くの企業はこの受注率に注目するが、安部氏の指摘は違う。「未受注案件が27件ある。この未受注案件に着目せよというのが、MAの出発点だ」(安部氏)。