私は時々、過去の経営者の話を読んだり聞いたりします。その理由の一つは、日本の成長を支えた経営者の行動に、今の時代でも見習えることがあるからです。
私が最初に入社し多くを学んだ花王という会社にも、有名な経営者がたくさんいます。その中の一人が丸田芳郎(敬称略)でした。
私が花王に入社した1992年、丸田は花王の会長でした。幸いなことに私は丸田が出席する会議に同席したことや、直接の指導を受けたことがありました。
私が新人のころに聞いた丸田の噂に、次のようなものがありました。「スーパーでよく、お客様をずーっと観察している」――。そのときの私には、真偽を確認する方法はありませんでした。
つい最近、『戦略経営に活かす 仮説検証のノウハウ・ドゥハウ』(PHPビジネス選書)という本の中に丸田についての記述を見つけました(編集部注:太字部分は書籍からの引用)。
自宅近くのスーパーに暇を見つけては行き、花王の商品の並ぶ棚を見つめていた。顧客の購買行動をじっと観察していたのだ。
私が花王にいたころ聞いていた話は本当だったようなのです。
このエピソードはB2C企業の事例ではありますが、B2B事業を展開する企業にも多くのヒントになるのではないでしょうか。カスタマーインサイト(顧客の潜在意識)の認知が大切だと頭では理解していても、それを実践できているでしょうか。そしてカスタマーインサイトを理解するために、身近でできることが多いのではないでしょうか?
今回は、B2Bのマーケティングでできるカスタマーインサイトについて考えてみます。
今すぐできるカスタマーインサイト
最初に紹介したいカスタマーインサイトを理解する方法とは、自社Webサイトのアクセス分析です。本連載では以前、「あなたの会社のWebサイトは成果を上げているか」という話の中でアクセス分析について説明しました。その後で多くのB2B企業と話したときに、意外とWebのアクセスを詳細に分析していない企業が多いという印象を受けました。