米国での急速な立ち上がりを経てのリリースから1カ月半、位置情報を使ったAR(拡張現実)ゲーム「ポケモンGO」は日本をも席巻しました。最近はその勢いにややかげりも見えてきたという指摘もありますが、登場した直後は、普段スマートフォンでゲームをしない人々を巻き込んだ大きなブームとなりました。
新しいテクノロジーに出足が遅い傾向にある自治体が素早い対応をするなど、従来にはなかった動きも見受けられました。地震で被災した岩手や宮城、福島、熊本が、ポケモンGOを活用した観光集客の計画を発表ました。
ポケモンGOが登場する前にIT業界では、「ARは終わった技術」という認識がありました。「2016年はVR(仮想現実)元年」と位置づけ、VRにかかわる大型商品・サービスのリリースや直前準備に追われていたのです。そんなタイミングで登場したポケモンGOは、改めてコンテンツオリエンテッドのアプローチに価値があることを提示しました。
最先端の技術だけでは実現できない課題と対峙してきたIT企業にとって、ポケモンGOが見せてくれた“普及する現実”から学ぶことは多いのではないでしょうか。そして、商品やサービスの普及には、ソーシャルメディア上での評価が必須なことも改めて実証されました。
今回はポケモンGOで再認識された、コンテンツ思考による技術開発とソーシャルメディアマーケティングについて解説します。
ビジネスとして成功しなかったAR(拡張現実)
目の前の風景にコンピュータ技術を使って情報を付加したり、強調することによって現実を拡張していく技術がARです。軍用技術として開発されたものですが、日本でその可能性に注目が集まったきっかけの一つがアニメです。