今週の木曜日は、11月第4木曜日。米国では感謝祭に突入する。その感謝祭翌日の金曜日は「ブラックフライデー」と呼ばれ、小売業界には年末商戦のスタートとなることは本コラムで何度も述べてきた。この日が非常に重要な意味を持っていることは、今では日本でも知られるようになってきた。
ところがそのブラックフライデーが、米国では形骸化し、単なる“節目”でしかなくなっている。ブラックフライデーを変容させたものこそが、消費者の購買行動の急激なデジタルへのシフトだ。
デジタルにシフトした消費者にECサイトは積極的にアプローチを仕掛けるようになった。少しでも早く確実に消費者そして売り上げを確保するため、徐々にセールの時期を前倒しにしていったのだ。
そして今では、いつからがブラックフライデーのセールなのかが半ばあやふやになったケースも少なくない。NRF(全米小売業協会)の調査では、「“年末”のショッピングを“11月以前に”始めた」と回答した消費者が約40%にのぼっていたという。さらに12%は、「“9月以前から”始める」と回答している。
消費者のデジタルへのシフトは、ブラックフライデーを単なる“節目”にしてしまっただけではない。デジタルにシフトした消費者は、つなぎとめることが難しい存在となってしまった。
2016年10月に米デロイトが発表した調査結果では、デジタルにシフトした消費者の現実が見えている。「もし店に在庫がなかった時」に、主に店頭で買い物をする消費者の約60%は“引き続きその店で買おうとする(他店舗やECサイトでの購入も含む)”。ところが主にオンラインで買い物をする消費者の約80%は「別な店やECサイトで購入する」というのだ。
つまりデジタルにシフトした消費者は、これまでよりも店舗に対するロイヤルティが低いということになる。
デロイトの調査によれば、2016年は今まで以上の勢いで消費者のデジタルへのシフトが進んでいるという。「実店舗よりもECサイトで購入する(44%)」という回答が「ECサイトよりも実店舗で購入する(38%)」という回答を上回ったというのだ。
さらに家庭での予算配分にも変化が見える。2015年は実店舗での購入分が50%でECサイトでの購入分が44%と、実店舗の方が若干上回っていたが、2016年は実店舗とECサイトがともに47%と、初めて両者が並ぶ結果となった。おそらく2017年はECサイトの数字が実店舗を上回るだろう。