企業のマーケティング活動がデジタル化し、ツールなどのテクノロジーも進化する中、かつては「デジタルマーケティング業務」と呼ばれていた業務も一般化してきた。高い専門性を持つ一部のスペシャリストによってのみ遂行されてきた業務は、もはやただの「マーケティング業務」になり始めている。

 こうした「デジタルマーケティング業務のコモディティー化」は、「デジタル領域での専門性」を売りにしていたデジタルエージェンシーを「安価なリソース提供業者」というポジションに位置付けつつある。この動きについては、本連載の以前の記事でも述べた(関連記事:「デジタル化の進展でエージェンシー活用が急増、迫り来るマーケ業務のコモディティー化」)。

 もちろん、デジタルエージェンシーはこういった状況に危機感を抱いている。例えばデジタルを中心にした企業のマーケティング戦略立案や知見、ノウハウの提供など、付加価値を高めることで「リソース提供業者」とは異なる立ち位置を築こうとする動きは、その最たるケースだ。

 しかし、その競争は激しい。米国の第三者調査機関であるEconsultancy社が2016年6月下旬発表したリポート「The Role of the Agency in Data Management」には、厳しい競争の現実が記されている。

 このリポートでは、デジタルエージェンシーは今後、アドテクノロジー企業やSI企業、そして戦略コンサルティングファームなど、これまではあまり競合してこなかった企業との競争を強いられると指摘している。特に企業の経営層に深く入り込んでいるSI企業や戦略コンサルティングファームが、デジタルを切り口に、マーケティング業務を手掛けるようになってきたことが大きい。デジタルエージェンシーは「知」の側面、そして「手足」の側面で、その立場を奪われていくのではないかと語られている。

 「手足」の側面では、さらなるツールの進化によって、省力化や効率化が進み、人手そのものが不要になるケースが増えてくる。「知」の側面では、例えば戦略コンサルティングファームが、(デジタルといった小さいくくりではなく)より広く包括的なマーケティング戦略を立案していく中で、効果的にデジタルを盛り込んでいく可能性がある。こうなると、デジタル専業のエージェンシーが「デジタル戦略」を提案する余地は少なくなるだろう。

 これは、マーケティング業務への意思決定プロセスが変わり始めているという意味もある。これまでマーケティング業務に企業のトップレベルが積極的に関与するケースはあまりなく、ほとんどがボトムアップで決まっていた。それが今後は、例えば“企業の経営陣+戦略コンサル”という組み合わせによるトップダウンで決まるケースが増えてくるだろう。

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