オンライン広告、特にディスプレイ広告に関連して「アドフラウド(Ad Fraud = 広告詐欺)」が、2016年頃から日本でも問題として議論されるようになってきた。アドフラウドとは、ボット(bot = 自動化されたプログラム)などを使い、多数の広告表示やクリック数を不当に発生させ、広告費用に対する成約数や広告効果を水増しさせるもの。欧米のインターネット広告業界では、早くから問題視されてきた。
米国でも既に5年ほど前から、アドフラウドについて活発な議論が繰り返されてきた。既に全米広告主協会(ANA)やアドテクノロジー企業を中心に広告業界が一丸となって対策を打っているが、アドフラウドを仕掛ける側とのいたちごっこが続いている。
そんな中、現地時間2017年5月24日に、全米広告主協会と米WhiteOps社がアドフラウドの現状をまとめたリポート「Bot Baseline 2016-2017」を発表した。これによると、広告業界の対策が、ある程度効果を見せているようにも思える。
本リポートは、全米広告主協会会員企業から業界業種を問わず49社を対象にした調査結果を元に作成している。これによると、米国のアドフラウドによる損失額は、2016年で約72億ドル(約8000億円)だったが、2017年はそれが約65億ドル(約7200億円)に下がると予測している。
つまり約10%の減少だ。特にディスプレイ広告は2016年に市場全体の11%がアドフラウドによって不正に水増しされていたようだが、2017年にはそれが9%にまで減少する。
さらに「もし米国内の全ての企業が、今回の調査対象企業と同じような形で対策を施していたと仮定したら」という試算もしている。こう仮定すると、アドフラウドによる損失額は上記の約65億ドルではなく、約33億ドル(約3670億ドル)と大幅に減少するものと推測されている。
さらに「もし米国内の全ての企業が、今回の調査対象企業のうち、特に優れた対策を施している上位20%の企業と同様の対策をとったと仮定したら」どうだろう。アドフラウドによる損失額はさらに大幅に減少して、約7億ドル(約780億円)にまで下がるのではないかとも推測している。
調査ではこういった数字を出しながら、業界一丸となってアドフラウド問題に取り組んでいくべきであると提言している。