新しいテクノロジーには、世に登場してから瞬く間に人々の生活に浸透し、さらには人々の購買行動をも変えてしまうものがある。近年では、スマートフォンがその最たる例といえる。
米eMarketerが、2018年1月末に発表した調査結果からも、現在のeコマースで、スマートフォンを含むモバイルがカギとなっていることがわかる。2017年は全世界で約1兆3570億ドル(約143兆9000億円)を売り上げた。これはデジタルによる売り上げの58.9%を占め、2015年の同40.2%から大幅に増加している。
そして人々の購買行動を変えると目されるテクノロジーがもう一つ、2017年ころから新たに広がり始めた。それが「スマートスピーカー」だ。
先日、米PwCが発表したレポート『2018 Global Consumer Insights Survey』では、米国で「AI搭載デバイスを使用している」と回答した消費者は全体の10%程度にとどまっていたという(編集部注:該当部分は個人情報の登録後に閲覧可能)。しかしこういった数字以上に、スマートスピーカーが注目されていることが見えている。
その一例が、米comScoreが2018年3月16日に発表した『2018 State of the U.S. Online Retail Economy』というレポートである(編集部注:レポートは個人情報の登録後に閲覧可能)。このレポートは、米国の流通小売業のオンライン市場の動きを中心にまとめている。
そこには、今回初めて「Smart Speaker Trend」というセクションが加わった。「eコマースの市場規模が年々拡大している」、「モバイルはますます重要なものとなる」といった例年変わらないトピックの中で異彩を放っている。
このセクションでは「米国消費者のスマートスピーカーの活用状況」を中心にまとめている。そこからは、米国消費者の購買行動が少なからず変化しつつある状況が垣間見えた。
例えば、「スマートスピーカーでやっていること」の一つとして「オンラインで商品を購入する」と回答した消費者が、スマートスピーカー利用者の30%を占めていた。また「食料品やサービスを注文する」と回答した消費者も、13%にのぼっている。
「天気予報を確認する(81%)」や「音楽を流す(74%)」といったサービスにはまだ及ばない。それでもスマートスピーカーを活用した購買行動が着々と普及しているのは確かだ。
購買行動の変化は、単に使用するデバイスが変わるというだけではない。スマートスピーカーによる購買行動の変化で最も大きいと考えられるのは「ブランドロイヤルティの低下」だ。
本調査では、スマートスピーカーを使用して商品を購入する際に「商品名(ブランド)を挙げる」と回答した消費者は全体の58%にとどまっていた。あとの42%は商品名を指定せず「品目だけ」で注文していた。