前回、無線LANの速度は受信できる電波の強さに依存することを、無線LAN接続上でファイル転送を測定した結果を基に説明しました。このときは、電波の強弱によって何が変わったのか、あるいは速度が変化した具体的な要因については触れませんでした。今回は、これらの点を取り上げます。

通信のために電波を用いるということ

 無線LANでは、空間を伝わる電波を用いて通信を行います。品質の保証されたケーブルを用いるイーサネットなどと異なり、ノイズの影響を受けたり障害物などのため電波が弱くなったりする悪条件下でも、通信を継続できる能力が求められます。これを実現するものとして、無線LANには受信したデータに対する「確認応答」という仕組みと、複数の伝送速度を使う仕組みが規定されています。

1. 受信確認応答

図1●無線LAN通信における受信確認応答。ブロードキャストあるいはマルチキャストされるフレームを除き、受信確認応答(ACK)が返されないフレームは再送される。なお最近は、「Block ACK」と呼ぶ仕組みを用いて複数のフレームに対してまとめてACKを返すこともある
図1●無線LAN通信における受信確認応答。ブロードキャストあるいはマルチキャストされるフレームを除き、受信確認応答(ACK)が返されないフレームは再送される。なお最近は、「Block ACK」と呼ぶ仕組みを用いて複数のフレームに対してまとめてACKを返すこともある
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 無線LANでは、伝送媒体の品質を保証できません。つまり、送信されたデータは受信されたと見なすことができないのです。そのため、無線LANでデータを受信したパソコンやスマートフォンなどの端末は、「ACK」(アックと読みます)というデータを返すことで、受信したことを伝えるようになっています(図1の左)。ACKが返ってこない場合は、そのデータは受信されなかったと判断し、再送されます(図1の右)。

 無線LANは、フレーム※1という単位でデータをやり取りします。フレームには、データを送受信するためのフレームのほか、「管理フレーム」と「制御フレーム」と呼ばれるフレームのグループが規定されています。前述のACKは、制御フレームのグループに属しており、このグループは主にフレームの伝送を援助する役割を持っています。


※1:「無線LANフレーム」と呼ぶこともある

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