無線LANを利用するとき、無線LANアクセスポイント(AP)から遠い場所では遅かったりつながらなかったりする問題が生じます。そうなる理由を多くの人は「電波が弱くなるためである」と感覚的に納得されているのではないかと思います。

 前回、APからの距離と信号強度に相関関係があることを、専用のサーベイツール(AirMagnet Survey)による測定結果を基に説明しました。今回は、電波の強弱と無線LANの使用感の相関を、実測結果を基に紹介します。

11nと11acはMIMOと周波数幅の拡大で高速化を図る

 測定についての話題に入る前に、無線LAN規格と実製品の仕様および構成について整理しておきます。

 2015年11月現在、最新の無線LAN規格はIEEE802.11ac(以下、11ac)です。ただし802.11acは5GHz帯だけで使える規格で、2.4GHz帯は対象外となっています。2.4GHz帯では、一つ前のIEEE802.11n(以下、11n)が最新の規格です。

 11acと11nに共通する特徴としては、MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)と使用する周波数幅の拡張により大幅な高速化を達成している点が挙げられます。

 MIMOは、複数のアンテナを用いることにより空間上で信号を多重化させる技術です(図1)。並列でデータを送信できます。このように並列にデータを送信する経路のことを、「空間ストリーム数」と呼びます。11nでは規格上、空間ストリーム数は最大4本までです。一方11acでは、8本まで許容されます。またMIMOは、通信の信頼性を高めるためにも用いられます。

図1●MIMOによる空間多重化のイメージ。送信したいデータを独立した複数のデータの流れ(ストリーム)に分け、複数の送信アンテナから並列的に送信する。それを複数のアンテナで同時に受信すると、アンテナごとに異なった合成波を受信する。それぞれのアンテナで受信された電波の差を元に信号処理行うことで、混ざり合った信号から元の情報を取り出す。ストリーム数を増やせば、その分高速化できる
図1●MIMOによる空間多重化のイメージ。送信したいデータを独立した複数のデータの流れ(ストリーム)に分け、複数の送信アンテナから並列的に送信する。それを複数のアンテナで同時に受信すると、アンテナごとに異なった合成波を受信する。それぞれのアンテナで受信された電波の差を元に信号処理行うことで、混ざり合った信号から元の情報を取り出す。ストリーム数を増やせば、その分高速化できる
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