IT機器やITサービスを検討する際のポイントの一つは、数値です。Webサイトに掲載された機器の仕様(スペック)、レビュー記事の評価項目などで、さまざまな数値を目にしたことがあると思います。これらの数値を理解すればするほど、機器やサービスの選択眼が磨かれるといっても過言ではありません。また多くの企業が関心を持つセキュリティに関しても、リスクを数値化してみると、脅威の状況をよく理解できるようになります。
本連載では、機器やサービスにまつわるさまざまな数値を実際に測定し、その数値の意味や測定結果から読み取れることを解説していきます。製品やサービス、さらにはセキュリティのリスクに関する知識を身に付ける参考になれば幸いです。
連載の最初のテーマは「L2スイッチ」です。L2スイッチは「レイヤー2スイッチ」の略称で、単に「スイッチ」あるいは「スイッチングハブ」と呼ばれることもあります。多くの企業のLANに設置されているはずですので、選択・購入したことがあるIT担当者も多いでしょう。
企業向けのL2スイッチは製品数も多く容易に入手できますが、侮ってはいけません。どれでも同じではなく、搭載しているポートの数はもちろん、どれだけの速度が出るかという「性能」も千差万別なのです。安いからといって自社のネットワークにとって性能不足の製品を購入すると「ネットワークが遅い」というトラブルを招きかねません。逆に性能があり余るものを購入してしまうと、無駄なコストが発生してしまいます。L2スイッチの性能を理解することは、とても重要です。
早速、L2スイッチの性能にまつわる数値を整理していきましょう。
イーサネットの性能の上限:ワイヤースピード
イーサネットのネットワークでは「フレーム(イーサネットフレームと呼ぶこともあります)」と呼ぶ単位で通信が行われます。Webやメール、動画などあらゆるデータは、イーサネットフレームの中に詰め込まれてやり取りされます。L2スイッチはもちろん、イーサネットネットワークにつながったパソコンやプリンターといった端末(これを「ステーション」ということがあります)は、住所に相当する「MACアドレス」というものを持っています。L2スイッチは複数のLANポートを備えており、あるLANポートから受信したフレームを宛先のMACアドレスを持つ端末がつながったLANポートへ転送します(図1)。
まずはスイッチがサポートするイーサネットの仕様について説明しておきましょう。製品情報などで「10BASE-T/100BASE-TX対応」「1000BASE-T対応」などの表記を見かけることがあります。これらはいずれも、イーサネットの仕様上の最大速度です。10BASE-Tは10Mbps、100BASE-TXは100Mbps、1000BASE-Tは1Gbps(=1000Mbps)になります。あくまで仕様値であり、L2スイッチが実際に出せる速度を意味するものではありません。
ではL2スイッチの性能は、どのような数値で表すのでしょうか?その尺度の一つとして、「イーサネットフレームの転送をどれだけ早く行えるか」というものがあります。この能力を表現するために、fps(frames per second)という単位が一般に用いられます*。fpsは具体的には、1秒あたりにL2スイッチが転送処理をできるフレームの数を表します。