前回は、無線LAN同士の電波干渉について説明しました。少し復習しておきましょう。ある無線LANチャンネルでフレームを送信中であるとすれば、これからフレームを送信しようと思っているほかの端末がいたとしても、送信中のフレームを送り終わるまで待たなければいけません。このように待たされて通信が阻害されることは、一種の電波干渉であるとお話ししました。

 なお、偶然同じタイミングで複数の無線LAN機器がフレームを送信した場合、これを送る電波が重なることで受信に失敗することがあります。この現象は一般的に「コリジョン」と呼ばれ、速度低下を招く一因となります。

 今回取り上げる電波干渉は、無線LAN以外の装置が発生する電波によるものです。送信したフレームにほかの電波が重なることで受信に失敗すれば、やはり通信に支障が出ます。そこで、無線LAN以外の電波が通信速度に与える影響を見ていきたいと思います。

混みあう2.4GHz帯

 「ISM(Industry-Science-Medical)バンド」という言葉をご存知でしょうか。そのまま訳して「産業科学医療用バンド」と呼ばれることもあります。ISMバンドは、主に産業や科学的実験、医療用の機器などで用いるために設けられた周波数帯で、無線LANが使う2.4GHz帯はこれに属します。その特徴の一つは、電波を発するための免許が不要であることです。無線LAN機器を購入して無線LAN環境を構築する際に免許証を求められることはありません。

 このように2.4GHz帯は免許不要で用途が多いため、無線LAN以外にも多くの機器がこの周波数帯を使用する点にも、着目する必要があります。例としてよく出てくるのは電子レンジやBluetoothです。これらがさまざまな場所で使われていることはご存知の通りです。したがって、これらの機器が発する電波による干渉は、どこででも起こり得るものです。

 5GHz帯を用いる無線LANでは、次回取り上げる予定の気象レーダーなどを除き、無線LAN以外の電波が問題になるという話は、ほとんど聞くことがありません。様々な電波による干渉と共存しなければならないというのは、2.4GHz帯の無線LANの宿命であると言えるかもしれません。

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